まとめてみる
バーノルド事件の『堀りあて作業』から出たエミリーへの『招待状』は、予想に反し、事件解決を前進させるものとはならなかった。
明日はおれがいいところに連れていってやる、と言っていたここの家主は、そんな約束は忘れたかのように、朝からずっと、持ち帰った資料を何度も読み返していた。
まあ、たしかにザックも、休めと言われても素直に休日を楽しめる精神状態にはない。
眉をしかめながらも、新人は言われたとおりにする。
「―― ええっと、最初の事件は十二年前。被害者はケイト・モンデル、二十三歳の絵描きの卵?美術の専門学校に行ってた。友達と美術展をひらくんで、友達の製作所で寝泊りするって言って家を出るけど、そんな制作の話はどこにもなくて、彼女は学校にも姿を現さず、心配した《仲間》が先に彼女を探しはじめた。彼女の『家族』がなかなか捜索願を出さなかったから、ってある。 ・・・一ヵ月後に、バーノルドの森の中、頭部がない状態の遺体が木に吊り下げられているのを、たくさんの人間が、発見」
ウィルの顔を思い浮かべる。
「 ―― 被害者は黒のドレスを着て、持ち物がそばに落ちてるってのはこの時から最近の被害者までみんな同じ。・・・最初の発見者たちの話しを総合すると、PCメッセージリンクにあらわれた『ジャック』っていうやつに誘導されてそこについた。 ウィルの話しのほうが詳しいじゃん」
「あいつの調書もそこにはさまってる」
ジャンがビールを振って口をつける。
「 で、 ―― 頭部が見つからないまま三年後、今から九年前に次の被害者ドナ・ホーンが発見される。 二十五歳。看護士で、病院を無断欠勤。病院から連絡を受けた家族がその日のうちに捜索依頼を出した。 一ヶ月半経って頭部のない遺体で発見。これは吊り下げられていなかった。代わりに、近くの木の枝に、ひからびた頭部があった。・・・これは、はじめの犠牲者のケイト・モンデルの頭部と確認。そしてまた、三年後、」
「ジャン!このハム食っていいのか?」
いつのまにか起きてきたケンが冷蔵庫をのぞいて声をはりあげた。
うるさそうに許可をだしたジャンが、ザックに続けるよう、目で指示。
「―― えっと、三年後だから、今から六年前。サラ・クロフォード、二十四歳。自宅で音楽を教えてた。 恋人でもあるバンド仲間から捜索以来が出され、またしても一か月半あとに、頭部なしの遺体で発見。・・・近くの木に、二人目の被害者ドナの頭部も発見」
「おれ、―― それ見たなあ。バートに手伝わされて」
生ハムを容れ物ごと持ちだしてつまむケンが、わきにはさんだビンをジャンのいるソファにおいて、床に座った。




