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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
女王のダンス

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№07- まとめろ



 ― №07 ―



「だめだ・・・」

 ため息とともにファイルを閉じたジャンは、それをザックに投げ寄越し、ソファを立つ。


 むかいのソファに寝転がったザックの腹の上に分厚いファイルが落ちた。


「おれのほうがダメだよ・・」

 重たいファイルをどかし、ひさしぶりに味わう身体のだるさにザックは目をとじる。

 


 配属されてまだ四日目。なにかと面倒見のよい副班長サブチーフに、うちに来るかといわれ、喜んで泊まりに来てみれば、なかなか趣味のいい家で、手入れされた庭まであって少し驚いた。

「ジャンのパパとママに挨拶したほうがいい?」

「おれは母親しかいないし、ここは『おれの家』だ。これ以上『家』にかんしての質問はうけつけない」

「なんだよ」つまんねえ、という言葉はのみこんだ。なんにせよ、初回の非番日を、今の仮住まいであるあじけない宿直室で迎えずに済んだのはいいことだ。



 でも、この身体のだるさがなければ、もっとよかった。



 原因は、配属されて二日目からはじまった仕事あとの『決まりごと』によるものだった。


「・・・あのさあ、おれ、訓練生のときに、正式に配属されたら、きっついトレーニングから開放されるって聞いてたんだけど・・・」


「『きっつい』トレーニングなんかしてないだろ?」

 立ち上がって台所へむかうジャンの動きは軽やかで、声にもザックのようなだるさはない。


「してない!?一時間近くトレーニングして、くじ引きで3ラウンドの試合かプールでリレー競泳するなんて『決まりごと』があるのに、トレーニングなんかしてない?」


 ひっくり返ったザックの声に笑いながら戻ったジャンが、手にしていたジュースの缶を差し出す。


「まあ、『決まりごと』なんて古くて重そうな名前がついてるけど、基本自由参加だしな。 ウィルだってきのういなかっただろ?参加しなくても、だれもなにも言わねえよ」


「そうかもしんねえけど、要は強硬班だけの『トレーニング』ってやつだろ?」


「ニコルは『仕事あがりのストレッチ』っていってるけどな。 ―― 昨日のプールリレーの対戦相手、J班だけど、ほぼ同タイムだったろ?平均年齢はうちよりかなり上だぞ。 かんじんなのは、《いつ何があるかわからない》ってことだ。気分的にはそれぐらい引き締めておけよ。もう、学生じゃないんだ」


「・・・そうかもしれないけど」

 たしかに、『訓練生』というものから解放され、そこでこなさなければならない鍛練から、いくぶん解放されたような気になっていた。


「怠ければ、そのぶん、あの世に近付く。それを体現した名言がある。『一日さぼって地獄へ一歩半』。実際にあとちょっとだったからな、うちの班長チーフは」


「えっ!?」


「ま、とにかく、ザック、ちょっとおまえがまとめて、おれに報告してみ?」

 自分で読むとうまくまとまんねえんだよなあとビンビールを片手のジャンが、さきほどのソファに座り、ファイルをさす。

 


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