自分をお祝い
続けてリビングのルイの声も響いた。
「おれもちょっと『掘り当て』たよ。どうやら彼女、何かのオーディションに受かってるみたいだなあ」
何の芝居だ?と冷蔵庫前に立つニコルが野菜の酢漬けの瓶をすかし見ながら聞く。
「うーん、芝居の名前はわかんないなあ。彼女さ、請求書と買い物のレシートを几帳面にとっておいてるんだけど、そこに、その日あったことを簡単に書きとめるくせがあったみたいで。ほら、これ。『選ばれた自分をお祝い』って書き込みのあるレシートがある。―― 買ったものは『ワイン、サーモン、アンチョビのビン、チーズ、牛肉、イチゴ』」
「牛肉?だって食わないって。・・いつの日付だ?」ニコルがおこったようにきく。
「三年前の四月」
「店の場所を調べろ」
「もうやってるさ」
テーブルに置いた端末機に、レシートの店の名前を打ち込んでいる。
その端末機の横に、寝室の確認を終えたケンが金属の小さな缶を置き、ザックが棚の裏から拾ったピンと埃のついた四角い紙を置く。
埃をはらって紙をつまみあげたルイがその文字を目で追う。
「こりゃあ、―― 中央劇場のチケットだね」
「きっと彼女、あのおっさんと出会った劇の券を、記念に取っておいたんだよ」
ザックがうなずくのに、ニコルが顔をしかめて聞き返す。
「記念品を、本棚の裏に?なんでそんな場所に?」
「きっと自分ひとりで楽しむために、その場所にしたんじゃないの?一緒にきわどい写真とか貼ってなかった?」
ウィルの言葉に二コルがひとこと言おうとしたとき、ルイが「見つかったよ」と端末機の画面をみんなにみせた。
「ああ、この店レイがよく行く食料品の店だ」ケンが端末に映る『ドーンズ』という店の画像をさして言う。
ニコルがいくつかの缶詰をテーブルにのせ、「この家からだとけっこうあるな」と店の位置を見て眉をあげ、テーブルの端にケンが置いた金属製の箱に気づく。
「これは?・・・ああ、ピルか。普通に避妊もしていたってことか?―― なあ、彼女はいったいいつから変わった信仰を持つようになったんだろうな」
箱を振ってニコルが首をかしげる。
ルイがレシートをひらひらと振った。
「つまりさ、ここに来てから、その『信仰』に会ったってことだ。合格をしたお祝いにはステーキ用の肉も買ってるし、この後のレシートにもビーフシチューの缶詰がのってる。 ところが、半年あとにはどこにも牛肉はでてこない。 ってことはつまり、そこまでは信仰も普通だったんじゃないかなあ。・・・もしかしてこの《合格》をきっかけに改宗したのかな?」




