『恋人』もふくまれる
ルイののんびりとした声がいつものように、みんなの疑問を整理した。
「でもさあ、ふつう俳優をめざしてここにやって来たなら、必死にそこだけ目指すんじゃないのかな?それに、たくさんチャンスはあった。 恋人が俳優学校も、やりたい役も選ばせてくれたはずだろ?なのに、彼女はそうしなかった。 なんでだろ? ―― しかも変なんだよ。資料をみたかぎり、その恋人に会う少し前から、彼女はなんのオーディションも受けてない。『真面目な彼女』がねえ。・・・ンでさあ、思ったんだけど、彼女が信仰してた宗教、なんだか『きめごと』が厳しいし、そのうえセックスを『神様がみてる』なんて、へんな事も言ってたろ?だからさ、―― もしかして、その《恋人のこと》もふくまれるんじゃないのかって、思ったんだけど」
「え?どういうこと?」
理解できなかったザックが聞き返すのに、穏やかな笑みを浮かべたルイは、ゆっくりといいきかせるように指をたてた。
「彼女の《一定のライン》の内側に、その大泣きした『歳のいった恋人』も含まれているかもしれないってことだよ。食事の制限みたいに ―― 彼女の『神様』が、『恋人は四十歳上の相手を』なんていったら彼女はどうする?」
「え!まさか」と驚いた声をあげたザックに、「おっさんのほうは、エミリーの『変わった信仰』に、『自分』が含まれてるなんて、これっぽっちも思ってねえだろな」とケンが笑う。
エミリーの住んでいたアパートメントは、働いていたレストランから歩いて二十分ほどの区画にあった。
劇場のある中心部からは、地下鉄で三つほど離れた場所だ。
小さなその部屋は、大衆レストランで給仕をしていた彼女の稼ぎで借りられることのできた環境。




