№05- 街並み
― №05 ―
大通りにはたくさんの店が軒をつらね、平日の昼間でも人通りは多い。
この大きな州の西側は海に面しているし、北にはバーノルドの森と、さらに奥には山脈と、それを映すマーノック湖がある。
その観光資源にめぐまれた州の都市中央部にはこの街の大切な財政資源であるカジノ、そして有名な『中央劇場』がある。
大通りにはランクのたかいホテルやレストランもあり、数年前から国有地を切り売りしはじめた湖の近くには、金持ちの別荘が立ち並び始めている。
東に隣接する州には昔から大企業の開発研究施設が集まっているため、先に人が住むようになったのは東側だった。ガーバディ警備会社の本社もそこにあり、役所などの公共施設もそちらに集中している。
落ち着いた雰囲気のきれいな街並みで、新しい住宅地が増えることもほとんどないため、古くからの住人ばかりだった。
一方で、開発されてまだまもない中央部よりの東部には、観光地で働く人たちのためにアパートメントが多く建てられた。
中央近くにはこの州での上限ぎりぎり九階建の高さの新しいホテルがいくつも立ち並び、雑然としたにぎやかな場所となっている。
観光に来る人々や別荘の金持ちをあてこんだ高級店を含めた大型商業施設も最近でき、まだまだにぎやかになる一方のようだったが、開発はここまでだった。
この州は、土地の売買にかんする手続きがややこしいうえに、中央部の土地のほとんどが国か貴族のものであるため、めったに売りにはだされず、余っているように見えた土地には国の施設が建ち、残りは緑地公園に指定されてしまった。
さらに、州の法律によって景観にかんする厳しい基準がもうけられ、観光客にさえ、乱せば多額の罰金が科せられるようになり、結果、にぎやかに騒いで過ごすだけの観光地ではない独特のルールを持つ観光地ができあがり、おかげで、ばかみたいなお祭り騒ぎは街中にあまりみられない。
だが、自分が子どもの頃をすごした場所とは違い、忙しい場所だな、というのがザックの第一印象だった。
朝の渋滞や、通勤者の人の波に驚き、まだ会社に寝泊りしてる間には、そこに加わらなくてよいのかと安堵した。
「 ―― おれは、きれいだなあって思ったな」
ステアリングでリズムをとるジャンが、窓から街並みを眺める。




