半分の方
ジャンの説明が再開される。
「―― 新しい犠牲者の遺体の状況は野犬のせいで、今まででいちばんひどかったけど、ほかは、いままでと同じだ」
ザックが誰にともなくたずねる。
「今までの遺体は全部あの森で見つかってんだろ?あそこ、立ち入り禁止にして、ずっと見張ってるってできねえの?」
代表するように、ニコルが答えた。
「あの森は、半分国有地で自然保護区域の森だ。税金で保護してるんだから、国民はあそこに入れる権利があるんだとさ。 ―― お前と同じ意見もあるけど、大半の人たちはあそこの森に自由に入りたいんだ。今回みたいに遺体が見つかった場所はしばらく立ち入り禁止になるけどな。 知ってのとおり、森には常に『保安官』たちがいる。だけど、問題は、やっぱり夜だな。―― 保安官の監視所の小屋は国道沿いの二か所の出入り口にあるだけで、夜は車でまわれる場所しか見回りしない。 なぜなら、森は基本的にあそこ住む動物たちのもんだからだ。 街灯もないあの真っ暗な広い森を、どうやってずっと監視する?毎晩何百人態勢で警戒するのは無理なはなしだ」
動物保護の観点から、この先も電灯がつく予定はないらしいと話はしめられた。
それに文句がありそうな新人より先に、昔のいたずらを後悔している金髪が、思いついたように指を立てた。
「あの森の中で『夜』、明かりがついているのは監視所のほかにも一か所あるよ」
ほんとか?と聞き返す二コルに、「城だよ」と簡潔な答え。
「ああ、なるほどな。半分のほうか・・・」
「半分って?」
ザックの質問に、にやけた顔のルイが答えた。
「バーノルドの森は、半分は貴族様の土地なんだよ」




