表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
〈幕開け〉 バーノルドの森事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/272

風船


 肌寒い秋の朝、まだ太陽ものぼっていない街中に、端末機を手にした人間があふれ出た。


 『ジャック』から『端末機』の特定のメッセージページをみるように指示があり、さらには公共の交通以外使用禁止を受け、言われた通り、みんなが赤いペンとビニールの接着テープを用意していた。


 だされた問題から《チェックポイント》を見つけ出し、真っ先にその場所ついた人間が、写真をとってジャックに送り、チェックポイントとして合っていれば次の問題をもらえる。

 持ってきたテープには、メッセージリンクで使う自分の《ネーム》と端末機の連絡番号を書き残し、次に到着した人間が端末機でその人間と連絡をとり、次の問題を教えてもらうというゲームになっていった。


 参加者はどんどん増え、チェックポイントには人だかりができた。

 すぐに、平日の朝のその集団に興味を抱いた暇人が、そのまま参加し、さらにふくれあがる。

 『不審な集団』たちの通報を受けた警察官が尋問をはじめると、それを知った出題者の『ジャック』が、こんな“メッセージ”をあげた。



『 まったく、警察官もびっくりのみんなの熱意には参った!こうなったら、その警官たちにも、平等なチャンスをあげなくちゃね。

 最終目的地には、きみたちが 《 今までみたこともないようなもの 》 を、ゴールに用意しておかなくちゃ!

 ここから先は問題ナシで場所を教えるよ、みんなそろってたどり着いてほしい。

 それじゃあみんな、しっかりと道順をテープで示して、たくさん貼ってくれよ。

     たくさんたくさん、他の人も招待しちゃおうよ! 』







「・・・なにが、『招待しちゃおう』だ」


 あきれたニコルのため息に、ウィルは口の端をさげ、そうだね、と同意した。


「出勤時間で動き出した街中の注目も集めて、ぼくたち馬鹿は調子に乗ってた。  楽しいお祭りに参加してると思ってたんだ。だから、あちこちにテープを貼って、警察官の質問にも『クイズ大会なんです』なんて答えて・・・、いつのまにか『指示』に変わったことにさして疑問も持たずに、言われたとおり、―― バスに乗った」


「あ!いま、思い出したぞ。たしか、あのとき、・・・十二歳の最年少参加者も現場にいたって。もしかしてウィル、テープを貼っただけじゃなく・・・」

 

 ニコルが言いかけたそれに、さすがに親父に殴られたよ、とウィルは左の頬を軽くたたいてみせた。





 まるで、貸切のような状態になったその長距離バスが目指すのは、《バーノルドの森》しかなかった。《ゲーム》の最終地点をめざす見知らぬ同士が、わくわくした顔で、森への到着を待ち、バスの窓から見えはじめた重なる木々を、ゆびさした。



             「 あ 」


 ふいに、だれかがそれを見つけた。



 ―――― 赤い風船







「バス停で降りても、その風船が、葉を落とした木々の間にみえかくれしていた。―― きっとあれがゴールの目印だって、みんないっせいに走り出した」




    浮かれてさわぐ一団を待っていたのは、一人目の犠牲者だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ