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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
〈幕開け〉 バーノルドの森事件

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PCと端末機



 PCパーソナルコンピューターをこの国に広めたのは、政府の考えだった。


 購入の資金を一部負担するかわりに一家にメインのノート型PCを置くことを義務づけ、番号制でそれらを管理した。

 《メッセージ》とよばれる入力した文章と画像のデータの通信ができるその機械で、税金や福祉関係、戸籍に登記関係、そのほか役所へ出向いてしなければならなかった申請手続きができるようになり、この二十年で古くからいた役人の数がかなり減らされ、何度かデモ運動につながっていたが、代わりに増えた役人がいる。

 PCの『メッセージリンク』での《おしゃべり》を監視する、『PC監視官』だ。


 『メッセージリンクのページ』は政府が管理する回線上にもうけた《交流の広場》で、いくつも種類があり、PC上の匿名のやりとりが可能なページだった。

 ただし、個人同士が直にすることはできず、すべてがおおやけにされ、みんながみえるページしかない。

 どこのメッセージのページにしろ、常に国の監視がつき、問題があるとみなされるメッセージは有無をいわさず即消去。それどころか、問題がなくともあげた『メッセージ』は数分たてばどんどん消されてゆく。

 

 だが、それでも、やはり、隠語をつかったあやしげなやりとりは後をたたないため、本来は警察官が管理するべきだとの声が多くあがっているのだが、政府はこの権限だけは警察に譲るつもりはないらしい。


 警察官がその痕跡をたどれないこのPCメッセージの問題は、早く警察に権限を渡すべきだといつも取りざたされてはいたが、管理運営している政府がいまのところ、必要なときにはすぐに警察官を派遣させる迅速さをみせ、さらには法律を追加してPCを悪用した場合の刑罰を重罪と同等にしたため、問題はうやむやのままだ。


 もちろん、このシステム自体に反対する人々も多くいて、思い出したように『監視反対』の集会などしているが、だいたいの人にとっては、メッセージが常に監視され、どんな内容だろうとも数分でページから消されてしまうのは当然のことになり、犯罪をにおわすようなメッセージをのせると、送った人間はすぐに警察に確保されるという事実も当然のことになった。


 メッセージページの種類もかなりの数にふくれあがった現在、PCのメッセージページといえば、一部のあやしいページをのぞけば、かなり平和なメッセージ交換の場である。

 



 一方で、PC義務化の数年あとからでまわりはじめた『端末機械』と呼ばれるPCの半分以下ほどの厚さと大きさのその片手サイズの器械は、個人同士のメッセージとデータのやりとりが可能だった。

 こちらは情報のやりとりに国の監視がはいらないうえに、外国から安価なものがはいりこみ、PCよりさらに早く国民にひろがり、家族や友達どうしのメッセージをやりとりするのに便利なものではあるが、『監視』のはいらない《メッセージリンク》は、当然のごとく犯罪に関係した《交流の場》が多くある。





 ウィルの家のノート型PCは、ほとんどウィル専用だった。

 両親も姉も、自分で使う必要がなかったし、触ることはほとんどなかった。

 なので、『端末機』も手に入れた十二歳の『クソガキ』が、PCとそれを、夜通しいじっていようと、何も言われなかったし、何をしているのか、家人には理解できていなかった。




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