『 やってみるかい? 』
そんな『指示』おかしいと誰も思わなかったのか?と口をまげたニコルに、言い訳するけどさ、とウィルは言った。
「はじめは、普通にPCのメッセージページではじまった、ただの《クイズ》だったんだ。ひまつぶしのPCメッセージのリンクのページでみんなが《おしゃべり》してたら、『ジャック』ってネームのやつがはいってきて、いきなりクイズを出し始めた。それに何人かがすぐ反応して、ちょっとしたクイズ大会が始まちゃったんだよ。でも、ジャックの出す問題が次第に難しくなっていって、誰も相手にしなくなったら、むこうが作戦をかえてきた」
『 じつはぼく、企画会社をやってるんだ。そこで、今度新しくはじめようと思ってる、参加型の《PC呼びかけパーティー》ってやつをここで試してみたい。 こうやってPC内で《おしゃべり》してる人たちに、さっきみたいなクイズを解いてもらって、端末機をもって外にでて、『目的地』を探してゆくんだ。『この州で二番目にできた警察署はどこだ?』って問題をだして、答えの警察署に移動する。そこで出会った者同士、知恵を出し合って、最後に目的のパーティー会場につくってわけさ。君たちが大騒ぎしながら移動することで、かなりの宣伝になるわけだから、会場では、パーティーのスポンサーが提供する新商品のサンプルがもらえたりとか、提携先のホテルや店のチケットがもらえたりする、っていうのを考えてるよ。どう?やってみるかい? 』
「―― みんなが大好きな話だよ。その日の夜中には、パーティーの模擬の呼びかけをしようってことになり、次の日にそれがスタートするのか決まって、参加自由の謎解きパーティーの話は、朝にはかなりの暇人が知るところになってた。・・・これもみんなで話し合って決めたつもりになってたけど、あとで考えるとみんな『ジャック』に誘導された結果だったってわけさ。で、のちの『PC監視官』の発表によると、『ジャック』が使ったPCの持ち主は特定されたけど、数日前に病死してて、登録の取り消しをする前に《別人》が勝手に使ったんだろうって。警察官があわてて捜査したところ、たしかに、誰かが家に入って使った、ってことだけわかった」




