№04- 情報整理
残虐表現あり
― №04 ―
「今回発見された頭部は、間違いなくナタリ・キットソンのものだった。彼女は当時、十九歳の学生だった」
ジャンの声を聞きながら、資料の中、微笑む写真を目にし、ザックはもう一度顔を洗いにいきたくなった。写真の中の女性は、自分と同世代。
その写真からは想像もできない状態になった顔を、昨夜見た。
――― ひからびた、あの頭
現場からそのまま会社に戻り、会議室で朝からの情報整理が始まっていた。
昨夜のレストランでの捜索の打ち合わせは、三年ほど前に行方不明になった、このナタリをさがすためのものだった。いや、正確にいえば、ゆくえのわからなかった、ナタリの《頭部》をさがすための。
レストランでザックが目にした『資料』は、三年前、行方不明となり《失踪捜索願い届》のだされたナタリ・キットソンが、そのひと月ほどあとに《頭部のない遺体》として見つかったときの写真と、その遺体のそばの木の上で見つかった、六年前 の被害者女性の、『ミイラになった頭部』の写真だった。
長年未解決で、この国のみんなが知っていて忘れない『バーノルドの森事件』の最悪の特徴ともいえるのは、バーノルドの森で見つかる被害者の遺体が、胴体と頭部で切り離されており、しかもその胴体と頭部は、 別人 であるという点にあった。
いや、正しくいうと、十二年前、いちばんはじめに発見された遺体は、頭部のない胴体だけだった。
その三年後に同じ森で発見された頭部のない遺体といっしょに、その最初の被害者の発見されていなかった頭部が見つかり、 ―― 以降、同じかたちの遺棄を三年ごとに十二年、繰り返されているのだ。
つまり、今回のこの発見も、《これから探すはずだったナタリの遺体の残りの部分》である頭部はみつかったのだが、同時にまた、頭部のない新たな被害者の胴体もみつかっていた。




