一か所をのぞいて
ザックの報告に、保安官たちはわらうようなため息をいっせいにもらす。
レオンもいいきかせるようにザックをみた。
「そういうやつらが、その『魔女』を見たくて、夜中にこの森にしのびこむんだ。 ・・・たしかに、多少の侵入を許してるかもしれないが、ほんの数分だ。この森では《自然》が敏感に反応する。持ち込んだライトはここの暗闇ではありえない光だし、皮肉なことに、おれたちより先に、あの野犬が防犯ベルなみに反応して、侵入者たちは早々に退散することになってるからな。 ―― だからこそ、バーノルド事件の殺害現場はここじゃないと断言できる」
「ぼくたちもその意見には賛成だよ。バーノルドの森事件の殺害現場は、この広い森のどこを探してもみつからないと思うね」―― ただ一か所をのぞいては、とつけくわえ指を一本立てたウィルを保安官たちは黙って見つめる。
「ぼくは別に身内ってわけでもないし、どうみても、完全に『変人』だよ。―― ハロルド・デ・ノースは」
レオンはじっとウィルをみつめ、ほかの二人の警備官に目をはしらせた。
「どういう意味だ?なんで、ノース卿が出てくる?」
「なあレオン、あんたは自分の庭で起こってることすべてを知ってるだろうから、こうして聞きに来たんだ。 ―― 『幽霊』の正体を教えてほしい。おれがいま驚いてるのは、・・・あんたたち保安官は、『ノース卿』と『幽霊』って単語が並んでも、違和感ないみたいだしね」
その指摘に虚をつかれたような保安官たちは顔をみあわせ、気まずそうにうつむいた。




