魔女がやった
ウィルが保安官たちをみまわした。
「ちょっと納得いかないんだよね。夜は真っ暗。小屋にはずっと保安官もいるっていうのに、よく湖に車を沈めようなんて考えたなって」
「あっちは、パトロールの範疇に入ってないからだ」
保安官の一人がむきになったように言い返す。
レオンがそれをおさめるように、両手をあげた。
「車が落とされたのがあの当日なら、そういう『隙』をつくったのは、おれのせいだ。『ネズミ』どもを捕まえることだけに指示を集中させて、応援をよぶのも遅かったし、夜ここは手薄なままだった」
「・・・まさか、あんた、ずっとここで指揮をとってたのか?」
ジャンのあきれた声に、若い保安官たちが、タオルがどんどん赤くなっていってみんなヒヤヒヤだったよ、とこたえる。
それに手のひらをむけたレオンが、そういうわけで、とウィルをみた。
「―― それを知ってる人物があの日にやったのならうなずける。が、―― ほんとにジェニファーがよびだしてたのか?」
「本人も認めてるよ。けど、どうやら車をおとしたのは彼女じゃなさそうなんだ」
「だろうな。ワルガキに会ってなければふつうの女の子だったはずだ」
どうかな?と首をかしげたウィルの横でザックが端末機をふって、はなしをもどすけどさ、と画面を読み上げる。
「 この森のお化けのはなしを集めるのに、オカルト情報のメッセージページで、『昔からある幽霊の話』がききたいっていれたらすぐに反応があったよ。 やっぱり『魔女の集会』がいちばん多くて、次が、白い影が木の上を移動するのを見たってやつ。それと、七、八年前からは女の歌声ってのが新しく仲間入り。この噂のせいで、やっぱりこの森には魔女が住んでて、バーノルド事件の犯人も真剣に《魔女》だっていう人もいる」




