ひきとったのは
「でもハドソンの話しからすると、男の方でチケットを手配した可能性もあるんじゃないか?ジャンたちにはここで初めて会ったみたいに言ったけど、実はどこかでエミリーを見染めてて、彼女と『劇的』な出会いをするために、誰かをつかってここのチケットを買って、彼女に送ったとか」
二コルが、ノース卿から贈られたという棚によりかかり口にしたのに、ウィルがないでしょ、と即否定。
「金も地位もあって人生経験のある男が、ウエイトレスを見染めたとして、そんなまわりくどい方法とる?逆だよ、逆。―― この劇場で、あんな芝居がかった、いわゆる 『おとぎ話』 みたいな出会いを 『演出』 されて、男の方が感激して、彼女にハマッタんだと思うよ」
おとぎ話とはほど遠い人生を歩んだ男なら、なおさらだ、と断言。
「まあ、それは、あの券を手配したのが誰かってことで、はっきりするだろ。身元を確認すれば、あのご老人の身内かどうかもすぐにわかる」
ジャンが身をかがめて箱に収まった本を何冊かとりだす。
受け取り確認証には鑑賞券と同じ通し番号がふってあり、日付ごとに番号順におさめられていた。
エミリーの券にふられた番号も容易に見つかり、その引き換え書類のサインを見た三人は一瞬黙り込んだ。
《氏名》フィリップ・ゴードン
「・・・・み、身分証の確認番号がある」
はじめに気をとりなおしたジャンが端末機を取り出し、書類に記載された数字を打ち込み、本部におくる。
ウィルは怒ったように口をとじて棚をこつこつ叩き、二コルは鳥肌が立ったと告白した。
本部からの報告が届くと、それをみてジャンが機嫌をなおした。
「このフィリップ・ゴードンは十五年前にこの州に移住してきたようだ。・・・ふうん。生活保護を申請して、とあるところに身元引受してもらってる。 ―― その施設が、どこにあると思う?」
「とある森の中にある」
「とある教会だと思う」
ウィルとニコルが仲良く答えを当てた。




