あやしい教会
ウィルがスコットに体をむけ、それって本当に教会なの?と確認する。
自分の父親から聞いた限りでは、ノース卿の城の教会は、『教会』というより、コレクションを飾った物置小屋という印象だ。
端末をいじる男が眼鏡をおしあげる。
「ええ。聖父は不在ですが、信徒たちで行う『祈りの日』も『悔い改める日』もあって、慈善活動のバザーもしているようです。ただ、活動の範囲がせまいですね」
それらの資料もみなの端末機に送り仕事を終えたスコットは、ジャスティンにすまなそうな顔をむけてみせた。
聞き終えた警備官たちは、やっぱり入らないとだめだな、地下室かもな、などと話し合っている。
なんだか自分だけ、のけものにされているような気になったジャスティンが、我慢できずに口を開いた。
「おいおい、さっきまでのジェニファーのはなしはもうおしまいか? なんでノース卿の教会なんだ?」
代表するようにウィルが、「ジェニファーのはなしが『おしまい』ってわけじゃないよ」と応じる。
「ぼくらは、ローランドが主催してたパーティーっていうのが、彼のつくったものじゃなくて、どこかで行われていたのを、真似してたんじゃないかって、考えたわけ。で、それはきっと、ノース卿があの城の中でしていたもので、あの敷地でいちばんあやしい場所といったら『教会』かなって」
「っはああ?」
裏返った声がでてしまう。
「なに言ってんだよ?こんどはローランドかあ?・・・たしかにおまえの親父さんのおかげでギャングもかなり捕まえられたけど、そりゃノアたちの事件だ。 話がとびすぎてるぞ」
捕まったローランドは、警察の聴取に、このパーティーは、ちょっとした刺激を求める人たちの遊びだったのに、いつのまにかギャングに主導権をにぎられ、自分は利用されただけだと訴えた。また、ノース卿とはここ二年以上は、まったく関係もなく、サウス卿にクスリまで渡して頼んだのは、ただ、久しぶりに会いたかったからだと言った。
なのに、なぜこの男たちはこんなに真剣に、ノース卿のことをはなしているんだ?
 




