チケットのとりかた
「・・・ちょっと質問したいんだけど、・・・この芝居の一年七か月前の値段って、どのくらいだと思う?」
そうねえ、と唇に指をあてた妻が口にした金額は、それなりのものだった。
「このお芝居も上演しはじめて、もう四年過ぎてるから、その頃はちょうど値段が上がり始めたころだと思うわ」
「どうやってチケットを取ればいい?」
「まず、希望するお芝居の《受付日》っていうのがあるんだけど、その劇場が指定した日時内の電話受付につながって、劇場が提示した金額を了承するの。そのあと、期日内にお金を払い込んだ人にだけ、劇場のPCから連絡があるわ。そうしたら身分証を持って、引き換え場所にチケットを取りにゆくの」
「身分証?ずいぶん、面倒なんだなあ。郵送してもらえないのか?」
「もらえないのよ。なにしろ引き換えたらその場で身分証を確認されて、受け取りの署名もしなくちゃならないんだから」
「知らなかったよ。 ―― そんな手間をかけてまで取ってくれて、ありがとう」
妻の手をなで、甲にキスをしながら、連絡しなければならない仕事仲間たちを思い浮かべていた。
――― ※※※ ―――
くらやみがうたう
やみにひびくのはささげるうただ
きよい炎をよびだし、うたをささげる
ささげれば、炎は、いきおいをまし、力をます
―― あれは、まだ、
力のために、さらなるものをほっしているのだ
きにいらない
きにいらないが、石の板の上には、よこたわる女
ゆっくりと、ゆっくりと、―― 眼がとじられた
――― ※※※ ―――




