閉店の札
「―― そいつは今大通り沿いのレストランで料理担当してるんだけど、ほら、観光客向けの大型店あるだろ。で、いつも仕事にいくときは、《ドーンズ》の駐車場にバイクを置いて仕事に行くんだ」
「何で、あの店の駐車場?」
ウィルのもっともな質問に聞いたままを伝える。
「店の客層が『お上品な連中ばっかり』だし、なにより大事なバイクを盗まれたくないんだ。あの店の駐車場、防犯カメラがないだろ? っていうことは、車に対するいたずらが少ないってことだからな。それほど広くなくて夜も電灯が多くていいらしい。 で、騒動のあった日も仕事にいくとき、とめようとしたら、駐車場には『閉店』のロープが張られてた。だけど先に、数台の車がとまってるんで、『むかついた』からロープを切ってバイクをとめた。 振り返って見た店の入り口にも『閉店』の札があった」
「時間は?」
バートの鋭い声。
「正確にはわからないって言ってたが、その日はいつもより早く行ったから、四時少し前だろうって。その日は八時にあがることにしてて、バイクのところまで戻ったら、店のまわりは警察官と野次馬だらけだった」
『元悪ガキ』の男は文句を言うように語った。
――― 店が閉まってたのに、中で『客がつぶされた』ってみんな口にしててさ。それって従業員の間違いだろって、立ってる警官に言ったら、今日は普通に営業してたなんて言うし、おれが見た『閉店』の札なんてどこにもねえし ―――
納得のいかなかった『悪ガキ』は警察官ににらまれながらも店のわまりをうろつき、裏のゴミ箱にその札を見つけた。それを警備に立っていた警官に伝えるも相手にされず、《仕方ないので》その納得いかない目撃情報を、ジャスティンに連絡してきたのだ。
「―― おかしいだろ?棚が倒れる間、店には誰も入れないようにしてあったんだ。おまえらはこっちに『事故』だったって報告したけど、きっと、」
「もちろん『事故』なんかじゃないよ。棚は人為的に倒された。それはもう、わかってるんだ」
さえぎったウィルの断言に、ジャスティンは情けない声をあげる。
「ほんとか?―― なんだよお・・・それでさっき、マークも驚かなかったんだな?ちくしょう、おれなんて、『呪い』じゃなくて人間がやったってわかって、すっげえ安心したってのに・・・」
おまけにこんなはりきって乗り込んできたってのに・・・、とは言わずにおく。




