№22 ― 違う生物(バートの家)
№22
ジャスティン・ホースがその家に入ったのは、今日が初めてだった。
仕切りのない広い家の中、あちこちにたむろっている男どもは皆よく知る警備官たちで、そこにまぎれた自分だけ『うく』ことになると思ったのに、それは間違いだった。
なにしろ、この中に一人だけ、『違う生物』が混じっている。
「あと、こっちのお皿取ってくれる?」
その『違う生物』の指示に従い、ジャスティンは棚の奥に手をのばし、むこうでフライパン片手に鼻歌をうたう《本物の》マーク・リーと目が合う。
キッチンの広い作業台の反対側ではスツールに座ったウィルとジャンがビール片手に、にやにやとこちらをうかがっているし、リビングのソファでは、この家の主であるバートが、ルイとくつろいだ様子で話し込み、大きな窓の向こうの中庭では、ザックとケンが子犬のように、ボールで遊んでいる。
その視線を、うらやましげに眺めているととらえたのか、『違う生物』のレイに、いきなり台所の手伝いさせてごめんね、と謝られる。
「い、いや。おれ、けっこう使える男だから」
自分でもよくわからない答に、きいていたジャンがビールをふきだす。
――― くそ、いつもなら脇腹にくらわすとこだぜ・・・
だが、隣に立つレイのせいで、おとなしくするしかない。
彼はあきらかに、《種類の違う男》だ。
バートの親戚(?)であるらしく、この家で同居しているらしいが、今までジャスティンがかかわったことのない、『違う生物』なのだ。
本来ならばけっして友達になれない《種類》だと思うのに、彼に反感を持つどころか、なぜか従っている自分を発見する。
「ナイフとフォークはどこにあるって?」
レイが引き出しを触ろうとするのをとどめてジャスティンが用意をする。
その両手の指に包帯を巻くことになった理由をきいたせいで、同情してこんなにおとなしく従ってるんだと自分を納得させる。
彼は、自分のせいでケンとマークが棚の下敷きになったと思い込んでいる。
――― いやいや、それは『呪い』で・・・
出そうになった言葉はジャンに足を踏まれて飲み込んだ。
いい笑顔を浮かべたそいつは、設備点検義務を怠ったのだから、店に慰謝料を請求しようと提案していた。
『巻き込まれた』のは、レイのほうなのだが、それを知っているのは、ここにいる警備官たちと、警察官の中では自分とノアだけだ。




