停電
ブツ、という音でもしそうな唐突さで、いきなり映像が消えた。
身を乗り出したジャンとウィルに、マークが聞いてきたままを説明。
「どうも、このときこの辺りだけで、短い停電があったらしいんだ・・・」
停電?と聞き返すジャンの横、端末機で確認したウィルが、そんな報告ないよ、と返す。
そんなことがあったら、会社のデータにのっているはずだ。
「そう、・・」とため息のような声を落とした男が、さらに聞き込んで得た情報を伝える。
「おかしいんだ。なにしろ、発電所も変電所も電線だって、何の異変も報告されてない。―― だけど、ずっとあかりがついてるこの店の駐車場が、数分間まっくらになってたって、近所の人の証言もとれた」
証言の時刻は夜中の十二時。
画像を停止させたPC上の時刻表示は、二十三時五十九分。
続きを再生してみる。
真っ黒だった画面がよみがえったのは、0時三分。
店の中の非常灯もまたたいて、夜中の何も動きがない画像を映す。
コーヒーを飲み終えたケンがようやく近寄り、椅子に腰を落とし説明した。
「店のやつが言うには、朝出勤したら防犯システムの警告灯がついてたんで、警備会社にも連絡して、一通りの確認はしたらしい。映像をみて停電のこともわかった。でも、どこのドアも無事だし、割られた窓もない。金庫はもちろん、PCや金になりそうなものもすべて無事。なので、『異常なし』、ってことだ」
ちなみにその警備会社はうちじゃないからそんときの資料は手に入らない、と付け足す。
いつものにやけた笑いはなく、どこか遠くをみているような顔つきだった。
「四分か。侵入して何かをするのには十分な時間だ」
ジャンが請け合う。
「たぶん一番お手軽な防犯システムだろうね。裏口も四桁の暗証番号を打ち込むだけで開閉する簡単なロックみたいだし、『ドアが無事』なら、誰か番号を知ってる人間が開けただけだよ」こういうのは意外と盗み見されやすいから、とウィルが見解を披露。
 




