転がりでたのは
おたがい疲れた顔をみあわせる。
「で、ケンとマークの話は?」
今回のこれって呪いなの?とウィルが自分の飲むコーヒーをいれながらたずねる。
ジャンはやや投げやりな態度で、棚につぶされかけた男二人の話を伝えた。
「まっさきに、『やられた』ってケンが口にした。あとは、書類にかけるようなことだけ口にしてさっさと消えたから、正式な二人の見解は聞いてない。・・・公園でボール投げしながら《相手》を特定しようとしたらしいが、できないままのところに、たまたまレイが来て一緒に行動することになった。 ―― 店の中でも視線は常に感じてたっていうが、マークはむこうが動くとは思ってなかったそうだ。まあ、むこうにしてもレイを巻き込むつもりはなかったようで、彼が離れてあいつらが二人になった瞬間、『それ』が転がり出た」
「『それ』って?」
「木彫りの人形」
「まさか・・・」
「ああ。ジェニファーの願いをかなえてくれるのとおなじだったってケンは言ってる。マークはその人形をみたことがなかったんで、つい、よく見ようと意識をもってかれた」
そこで棚が倒れたが、ケンがカートを利用して作った隙間にマークを引っ張り込んで、「ふたりは無傷だったわけだ」とジャンが説明する。
「それでレイが両手切り傷だらけって、泣けるよね・・・ちなみに、ケンとマークって、どこに『消えた』の?」
「聞きたいのはおれの方だとだけ言わしてもらう。―― で、ウィル、おやじさんの方、まとまったのか?」
どうにかまとめたよ、とためいきでこたえる。
「あいかわらずあちこち寄り道する話を短くね。 ―― 今日はもらったクスリについて調書を警察でとるから、ちょうど見かけたマイクに引き渡したんだけどさ。《接客室》に連れていかれたよ。これは異例の扱いだよ、って念を押したんだけど、あの人に理解できてるかは疑わしい」
出迎えた愛想のよい警察官に、古い知人であるギャラガ―はどこかと聞き、思い出したように、シェパードの新しい愛人の話をしだした父親にこめかみを押さえた息子は、苦笑するマイクに、あとをたくした。




