疲れた二人
「それで、レイの方は?」
ウィルの問いに、髪をかきまわすジャンが眉間のしわを深めた。
「あいつ、崩れ割れた商品かきわけて、ケンたち探しにつっこんでいったっていうんだ。結果、両手とも包帯ぐるぐる巻き」
「レイらしいよね。ぼくだったら絶対にやらないよ」
ばかにするでもなく首をふるウィルが微笑む。
ジャンが疲れ切ったように息をもらし、カップをのぞきこむ。
「まあ、カートの上に倒れた棚があったから、あの二人もすぐには出られなかったらしい。ケンとマークは擦り傷程度だ。現場に残った血痕はレイの手から出たもんだけど、念のため三人まとめて病院に連れていかれた。 ―― むっつり黙ったままのケンがやばかったんで、強めの鎮静剤でも打ってくれって頼んだんだが、医者に却下された。・・・レイは半泣きで謝って、バートには連絡しないでくれって頼んでくるし・・・・」おれだってできりゃ内緒にしておきたかった、とコーヒーに口をつける。
「そうか。バートたちはまだ警察にいたのか。まあ、パーティー会場で捕まえた人数がすごいもんなあ」
「でも、どうにかひきわたせた」
ジャンは、ローランド確保に出向いていたバートを、ごったがえす警察署内でさがしだしてレイを渡したあとここに戻り、首根っこを押さえて連れ帰ったケンとマークに事情を聴きつつ会社に提出する書類を作成し、各方面への報告と調整をすませ、一息ついたときに、さっきまでそこにいた二人がいなくなっていることに気がついた。
目をとじて額をもむ副班長を同情するように笑うウィルは、きのう会社内で行った父親の聴取に立ち会い、その最中にケンたちが《つぶされた》と聞いたのだ。
ジャンの命令でそのまま父親につきそって実家へと帰り、今朝は警察での聴取があるのになかなか家を出ようとしない父親を何度もせかしてようやく連れだし、役目が終わってようやく自分の仕事場へと戻ってきたところだった。




