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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
ジェニファーの呪い

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襲いかかる


「その村のおとなも子どもも、昼間は畑に出て作物を育て、貴重な家畜の世話をして、男たちはジャングルに狩りにも行った。 近くで戦争が起こっていても《そこ》が戦場にならないかぎり、普通の暮らしを続けてる。よくある村だ。おれも、――― 戦争孤児のふりして、そこに行った」


「・・・・・・・」

 ケンは『少年兵』だった。

 それは、誰もが知っていて、誰も本人に確認しない噂だ。


 何も返せないマークに、意外そうな顔をむけた男が、いつものようににやりと笑う。


「おまえらしくねえ気の遣い方だな。ただの体験談だ。 ―― 『小規模反勢力』いわゆる、『ゲリラ』を潰しに、おれは送られた。その村に、やっかいな勢力団がひそんでいるって情報だった。が、『潜んで』たんじゃない。 その村の《住人がみんな》が、ゲリラだったんだ。無表情に仕事をこなす男も女も、笑うことのない子どもも。 ―― おれがそこで何をしたかは、とりあえずここでは触れないでおく。おまえに今知ってほしいのは、その村で感じた視線だ」


「・・しせん?」


「新顔のおれがその村についたときから、それがはじまった。《常に監視されてる感覚》だ。ただし、尾行や見張りは見当たらない」


「それって・・・」

 焦点が急にはっきりとしたように、ケンの焦げ茶の目と合った。


 顎をわずかに引くように、にやついた口が続ける。

「それと、エミリー・フィンチが自分を祝うための料理を、この『ドーンズ』で買ってる」


「エミリー・・・って、バーノルドの五人目の?」


「ああ。―― レイが使うってことは、この店、高級店なんだろ?おれはそういうのわかんねえけど、ウィルの意見では、女は自分の食べたいものがあれば、仕事場からも家からも離れてても買いに来るらしい」


「まあ、女性なら確かに、そういうこだわりもあるかも・・」


「でも、――― 」

 ケンが次を言いかけたときだった。


        

             カラ ン ―――


 棚に挟まれた通路の終わり。むこうがわに黒い何かが転がり落ちた。


 ほんの一瞬だったが、それに気を取られる。




         「っつ!」「ふせろっ!!」



   商品を吐きだす棚が襲いかかる。


          

 

           ケンっ!! マアークっ!!


  

                レイの悲鳴のような声をきいた。





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