ぢみちな仕事も
慣れたように窓辺に行ったルイとニコルが、カーテンを閉め切る。
抱えていた封筒をテーブルに置いたバートが、最後に入ったザックにドアを閉めるよう命じた。
椅子に腰をおとしたケンが、わざとらしいため息をつく。ニコルがそれをたしなめる。ウィルが眉をしかめ、ルイがザックに座るよう促し、テーブルの上にのった封筒を見たジャンが、言いにくそうに口にした。
「その、・・ザック、悪りいんだけどな、明日、仕事、はいっちまったみたいなんで、歓迎会まえに、ミーティングだわ」
「え?明日って、非番じゃねえの?」
もらっていた勤務表では、そうだった。
「残念ながら、――」とウィルが前髪を払い、「おれたちは警察官とは違うんだぜ?」と、つまらなそうにケンが腕を組む。
「急な仕事を頼まれるのが、民間のつらいところだ」辛くなどないようニコルが口端をあげた。
「おれたちって人気者だからな。じゃあ、はじめんぞ」
ジャンの号令で、何かが切り替わったように男たちの顔つきが変わった。
ケンが封筒を逆さにふって、中からあふれた紙を、文句もなくニコルが整え、各人に渡してゆく。渡されたのは、どこかの地域の拡大地図だった。
「じゃあ、明日の『補助』ための、確認作業はじめるぞ。終われば、歓迎会開始だ」ジャンが、手にした紙の束を振る。
ザックのとは違い、なにやら人の写真などが印刷されているようだ。
まだ困惑ぎみの新人に、ジャンが思いだしたように説明した。
「うちの会社は、どこの部隊だろうとも、『補助』もやる。今回は警察からうちの《捜索部隊》にきた協力要請で、・・・ひどい事件にまきこまれて行方不明になった人間の捜索だ」
「え?そんなことやんの?っっつ!?」
後ろから太い腕がまわっていた。耳の後ろに、そんなことってどんなことだ?とケンの低い声。
「いいか?おれ達の仕事に、『差』はねえ」
「ケン、いじわるはやめなよ。普段そんなこと言わないくせに」
ウィルのそっけない制止に、ふ、っと耳に笑いをかけ、腕が離れた。
「でもたしかになあ。ザックはただでさえ、はじめからうちの班希望だったっていうし、《強硬》だからって、いっつも危なくて目立つ仕事してるわけじゃないってこと、先にちゃんと説明しておかないとさあ」ルイが皆をみまわし提言。
バートがジャンをゆびさす。
「昔のおまえとよく似てるな」
「おれもそう思ってるから黙っててくれよ」
自分の頭を撫でるようにかきまわしたジャンが、いくぶん赤くなった顔をザックにむける。
「ルイが言ったとおりだ。『強硬隊』だからって、荒っぽくて派手な仕事ばっかじゃねえし、忍耐が必要な場面もある。ほら、学校でも訓練生のときでも、眠っちまいそうな地道な捜査方法とかの授業があったろ?そういうのだって、大事な仕事だ。―― もし、おまえの大切な人がある日、いきなり行方不明になったらどうする?」
「そ、そりゃ、さがすよ」
「ああ。だけど、行方不明者ってのはそう簡単に見つけられるもんじゃねえんだよ。ことに、何かの事件に巻き込まれてる場合は。《捜索部隊》は、そういう人たちを地道にさがすんだ。根気と、勘、ときに運が必要な仕事だ。『補助』で参加するおれたちも、それを必要とする。―― 準備はいいか?ザック?」
「わかった・・・。気合入れてやる」
片手を誓うようにあげた新人に、まばらな拍手が
おこる。
ジャンより素直で熱心だ、と書類に眼を落とす班長をうらしめしげに見た副班長は、何もいいかえさなかった。




