パーティーは終わり
「 ゾンビじゃないよ。―― わかってるよな 」
「・・・は、い・・・」
手首をつかまれていなかったら、ゲームのように、その女を撃っていただろう。
見つめ合ったルイの目が、ようやくいつものように静かに微笑み、ザックに銃をしまうように命じる。
「もう許可するまで触るな。どうした?ガチガチだな。今度、ゲリラ戦の特訓だ」
つかまれた手をゆっくりとひきおろされる。
二コルがザックの肩を抱えて反対側をむかせ、その光景をゆびさす。
「ほらあそこ見ろよ。かみつかれた当人は、あんなに優しく彼女を失神させた。見習えよ?」
喰いつく女の首に腕をまわして絞めた結果が『優しい』かどうかは別として、警察官は犬にかまれたぐらいの気持ちで対応していることがわかる。
近くで盾を使って男を床に抑え込んだ女の警察官が、みんなが脅かしすぎたからよ、とザックの肩をもち、ルイが、甘やかさないでくれよ、と返し、二コルが大きな手でザックの頭をがしがしと撫でたとき、乾いた銃声が数発。
反射的に身をかがめ、ザックはしまってある自分の銃をしっかりと押さえ込んでしまった。ルイは銃身を両手で持ち直し、あたりをうかがう。
「――― しょくん、どうやらパーティーは、終わりの時間だ」
今度は銃声ではなく、気取った言い回しの声が響く。
そうしてそれに、聞きなれた声が重なった。
「ローランドさん、これが『パーティー』っていうなら、今度あんたがパーティーを開くときは、ぜひおれたちに招待状を送ってほしいね。 場所ならいいところがある。年に何度かしか使わない《講堂》とか、特殊訓練用の《倉庫》とか。 まあ、なにしろ警察も、大人数集まるもんでね」
ノアのその嫌味に警察官たちから笑いがもれたとき、唐突に明かりがつき、天井で黒い布に巻きつかれたシャンデリアたちが輝きだす。
不気味だった黒い空間は一転して、裸の人間がたちつくす、滑稽な空間へと変貌した。




