気にいらない
バートは、ため息をかくそうともせずに質問した。
「―― ・・・なるほど。ノース卿の知り合いが、ですか・・・。十年前・・・ノース卿もその劇のパーティーに出てたわけですね?」
『ああ。あれきりわたしも会ってないがね』
「・・・・まさかそのパーティーって、《女王のダンス》って芝居じゃないですよね?」
『すごいな。さすがプロだ』
「・・ノース卿と芝居の関係は?」
『劇場の関係者に、ハロルドがあの芝居を売りつけてきたらしい。劇場側は、どこかの企画会社でも紹介されるのかと思ったら、自分が見つけた才能のある脚本家の芝居を上演すべきだと、見たことも聞いたこともない男を連れてきた。顔をたてて会うだけのつもりだったのが、試しに読んだ脚本が気に入って、あっという間に事が運んだわけだ』
自分も資金を出すことにしたしたのだが、ハロルド・ノース卿がかかわっているのを知ったのは後日だったとつけくわえた。
『白い粉』をくれたのはその『脚本家』のローランドという男で、二回しかあったことがないことを確認し、わたされた《粉》は、明日ウィルたちが行ったら『証拠品』として渡してほしいと伝え、電話を切った。
―――― 気に入らねえな
サウス卿が、ではなくて、このところ何度も耳にする『女王のダンス』という芝居と、それとともにちらちらと影をみせる、貴族が。
エミリーへの《招待状》が、実際に事件に絡んでいるのかどうかも確かではない。
だが、あの芝居の一文を、三人目の犠牲者であるサラ・クロフォードも口にしていたのは、ただの偶然とは思えない。
そこへきて今度の、ゴードンにまつわるおかしな話には、ヤニコフがメッセージリンクで、やはり『女王のダンス』から引用された文を読んでいる。




