№17 ― ついでに
№17
おとといの夜、息子の行動理由を知りたいがために自分にじかに電話をかけてきたサウス卿とバートは、実はウィルと知り合うより前からの知人である。
警備官として働くバートに妙なぐあいに好感をもっていたらしい貴族様は、自分の息子が警備官になると決まった時、うれしげに連絡してきた。
まあ、そのときは、まさか彼が自分の班員になるとは思ってもみなかったが、その『息子』は父親が心配するほどのまぬけでも弱虫でもない、頼りになる男だった。
いささか心配性な父親からの電話に、ウィルたちはゴードンのことを確認するためにそちらにむかうのだと伝えると、相手はいつものようにそれだけですべて了承したようで、「それは楽しみだ」と浮かれた声をだし、「そういえば」と、ついでの用件を思いだしたかのような、貴族独特ののんきさでもって、手元にある《白い粉》のことを相談された。
『―― こういうのは、警察を家に呼んでもいいものかね?』
お茶に呼んでいいかというような声の調子に、さすがに眉間をもんで考えをめぐらす。
「・・『白い粉』ですか?そりゃ、もしかして・・」
『どうも、その成分が、よくある違法のクスリってやつらしいのだが』
「・・そうですか・・・どちらで手に?」
のんきな説明によると、昔、劇場の初演後のパーティーでノース卿に紹介されたローランドという《かけだしの劇作家》と、先日、慈善事業のパーティーでばったり会うと、彼はこの十年で《有名な劇作家》になっており、今度自分の主催するパーティーにもぜひお越しください、と渡してきたのが、封筒に入れられた招待状と、油紙に包まれた、《白い粉》だったという。
何かの調味料か薬だろうと思ったサウス卿が、頼りになる執事に見てもらい、そっちの方面のクスリだということがわかり、さて息子にでも電話してみるかと思っていたところにむこうから、明日いきなり来ると連絡がはいった。
だが、息子は訪問の目的も口にせずに、さっさと電話をきったので、彼の『上司』に連絡をとり、半年ぶりに家に寄りつく気になった目的を聞きだし、《ついで》に、その粉についても相談をしてみた。―― というわけだった。




