表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
掘りおこした ゴードン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

176/272

ちょっと 父さん (サウス卿の証言)


 それを笑うように、ニコルたちにも椅子をすすめ、サウス卿は種を明かす。


「久しぶりに電話してきた息子が固い声で、仕事に関係することで、このわたしに確認したいことがあるなんていう。我慢できなくてね。―― バートに直接電話して、どういうことなのか教えてもらったんだ」

 

 息子が勘弁してほしいというように、額をおさえ、離れた椅子に腰かけた仕事仲間の同情のこもった笑いをもらう。

 当の父親は、気にするなと息子に微笑みかける。


「・・あのさ、会ったら、ちゃんと説明するって言っただろ?」

「こっちに来てから説明をされても、こんなにちゃんとしたものは渡せなかっただろうな」

 いいながら、サウス卿は立ち上がり、奥にしつらえた書棚のほうへ移動しすると、ゆっくりとした動作でファイルを棚からとりだして戻る。


「―― わたしももう、それほど自分の記憶に自信がなくてね。―― うちの有能で頼りになる執事に作らせたものだ」ゴードンとの出会いから、ハロルド・デ・ノースに紹介するまでの経緯と、彼に関する調書がまとめてあると説明し、少し困ったようにつけくわえた。

「・・・そこにも記したが、フィリップはいろいろな大学から、貴重な本を勝手に持ち出している。そういう道徳観念は、どうにも薄かったんだ」

 これを渡すんだから、いまさらクリスティーナに、ははなしをききにいかないでくれ、と警備官たちに頼む。

 

 受け取った息子はうなずいて、すぐにファイルをひらいた。


 椅子に戻ったサウス卿にニコルが顔をむける。

「ノース卿とは、今でもお会いになるんですか?」


「会う必要もない人物には、会わないさ。立場上で会いたくもない人物といつも笑顔でいるんで、余分な愛想は残っていなくてね。―― ああ、でも、十年ほど前に、会ったな」

 ゴードンが亡くなってからはその一度きりだと息子を見た。

「劇場で、『女王のダンス』というロングランがあるだろう?あれの初演に招かれたら、ハロルドがいてね。驚いたよ。あんなに人がたくさん――― なんだ?・・・なんでそんなに詰め寄ってくるんだ?きのうのバートといい・・」


「ちょっと、父さん、『女王のダンス』とも関係してるのかい?」

 息子が椅子からめいっぱい膝をのりだしている。


 残りの二人も真剣な顔をむけていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ