矛盾した状況
「まず、きみは、自然保護法で裁判にかけられるのは決まってる。 保安官はきみの顔も忘れていないからね。それに、あの三人の水没事件にきみがかかわっているのは、決定だとぼくは思う。だから、訴えられない」
「ばからしい。証拠でもあるっていうの?電話をかけただけよ?」
挑むように向かいあったジェニファーが、負けずに腕を組み、頭をかたむけてみせた。
「何の用で?」
《マーク》の問いに一瞬詰まったように、赤い口が硬く閉じてから、ゆっくりと開く。
「・・・あの三人に、文句を言いたかったの。国道沿いに迎えにくるよう、言ったわ」
「そこで待っていた?」
「そうよ」
「それから?」
「『心配してたんだ』なんてやってきたあいつらに、おもいきり罵声をあびせて、車をけとばしてやったわ。 そしたらピートが怒って、・・・またしても、わたしを置いて、はしりさった」
「きみは、彼らと一緒じゃなかった?」
「だから言ってるでしょ?やったのはわたしじゃないって」
いらついたようにまた歩きだしたのを喜ぶように、《マーク》が微笑んだ。
「―― それなら、聞こう。きみがやっていないというのなら、きみの代わりにあの三人に手をくだしたやつは誰だい?きみは知っているんだろ?」
「・・・しらない」
「しらない?そうか、・・・ならやはり、ただの『偶然』ってことだね。きみの言うとおり、あの三人が死んだことにきみは全くかかわりがない。 つまり、―― 彼らはただの、事故死だった」
「それは、ちがう!」
その否定に驚いたジャスティンは、手にした録音機を止めそうになる。
――― なんだ?矛盾した状況だな・・・
足を止めずに《マーク》をにらむ女は、せっかく出た『事故死』という言葉を強く否定した。
普通、自分が疑われている状況ならば、喜んで受け入れるべき言葉なのに。
 




