中身は変わらずケンだった
女はヒールを響かせて、ゆっくりと歩き出す。
「それは、たんなるきっかけにすぎないわ。―― あの三人は、わたしと関わった時点ですでに、ああなることが決まっていたのよ」
「それは、きみに殺されることが決まっていたってこと?」
自分の周りをまわり始めた女をおもしろそうにながめ、《マーク》は聞く。
「しつこいわね。 言ったでしょ?わたしは犯人じゃないから、あの三人を殺してなんていないわ。―― だけど、あの三人はもともと、わたしとは関わっちゃいけない種類のひとたちだったのよ。そのうえ、わたしにひどいことをしたから、こんなに早く死ぬことになっちゃった」
「それはどうかな。きみは、あの三人と一緒にバーノルドの森へ行き、そこで保安官に傷を負わせた。一人逃げそこなったきみは、それを恨んで三人を呼び出した。 まあ、一人でやったとは言わないけど、湖へ車ごと突き落とすぐらい、きみでもできそうだ」
腕を組み床を眺め話す穏やかな声音の《マーク》を見ながら、中身は変わらずケンだな、とジャスティンは納得する。
こつり、と足を止めた女は腕を組む男を睨む。
「―― 証拠もないのに、ずいぶんね。あなた、この会話録音されてるの知ってるの?わたしが訴えたら、どうするつもり?」
「きみは訴えたりしない。いや、―― できないさ」
眼鏡を押し上げる男は、柔らかくも、ばかにした笑いをのせた顔をあげる。




