今はもってない (ジェニファーの証言)
「はじめましてジェニファー。できれば、あなたのお部屋でお話をうかがいたのですが。 こちらはジャスティンで、 ぼくは 《マーク》 です」
申し出た眼鏡の男を値踏みするように見たジェニファーは、まあいいわ、と顎をあげる。
「先に言っておくけど、部屋の中の物に触らないで。あなたたち、令状を持ってるわけじゃないんでしょ?わたしが許可したところ以外は、けっして触らないでよ。それと、録音はべつにかまわない」
言い置いた女を追って部屋を出るジャスティンは、録音機のスイッチをいれ、後ろからくるケンに小声で話しかけた。
「えっと・・・マーク?なのか・・?」
「なんです?」
「・・・いや、べつに・・・」
なぜ、ここで偽名?という質問は、見たこともないその笑顔が不気味で出せないし、この様子では、『マーク』になった男に合わせなければならない。
大きく広い階段をのぼり、さらに廊下を奥へと進むと、突き当りの白いドアで女が振り返る。
「・・・ねえ、あなたたち、警察官じゃないんでしょ?」
眼鏡をかけた男に、挑むように視線を投げる。
「ええ。でも、お話を聞くときの、あなたの権利に変わりはないですよ」
肩をすくめた女が二人を見比べた。
「べつにいいわ。弁護士を呼ぶつもりもないし。そうじゃなくて、―― 聞きたいのは、あなたたちも拳銃を持ってるのか、ってことよ」
「持ってますよ。今は持ってないですけど」
《マーク》がシャツだけの自分をしめすよう、両手を軽くあげてみせる。非番のジャスティンも同じように手をあげてみせた。




