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まともに会った
母親のひきつった息を呑む声と、父親のうなるようなつぶやきを耳に振り向けば、開いたままの客間のドアに細身の女が片腕でもたれ立っている。
この時期にはまだ寒いようなノースリーブに柔らかく膨らんだ形の短いスカート。細い足に、踏まれたら痛そうな踵の靴。
今時の、若い女の普通の格好だった。
いっぺんでそれらを確認したジャスティンは、彼女自身をみる。
ふわりとカールした、濃くきれいな金色の髪。幼いような丸いつくりの顔はかわいらしいのに、口にはどぎつい赤い口紅。
表情はこのうえなく馬鹿にしたものを浮かべていた。
「―― 聞いたでしょ?この人たち、わたしと関わりたくないのよ。こうしてまともに会ったのもひさしぶりだわ」
「えっと、・・あなたがジェニファー?」
「それしか考えられないじゃない?あなた頭ゆるいの?」
「・・・まあ、かもね・・」
撫でるように頭をかいたジャンは、後ろに立ったままの男二人をあおぎ、この二人が、あなたからお話を聞きます、と紹介した。




