むりよ!
父親は、そうか、とあきらめたように声をこぼし、それをきっかけに、母親が嗚咽をもらす。
ジャンは自分の代わりにひと仕事してくれた隣の男にうなずき、つとめて暖かい声を出す。
「―― ご両親が心配なさるのはわかりますが、彼女からはどうしても、ちゃんとした話をききたいのです。―― 場所は、ご自宅ですが、これは、正式な事情聴取になります。 許可がいただければ、お嬢さんの聴取は別室でおこないたいと思うのですが。 うちの人間二人がドアを開けたまま行います。 様子は録音機械に記録します。 よろしいですか?」
泣き続ける女に腕をまわす男は、ジャンに視線をあわせ、おごそかにうなずいた。
「もちろん、わたしたちは協力、します。 ・・・ですが・・・」
「なんでしょう?不安があれば言ってください。弁護士を呼んでくださってもけっこうです」
「いえ、・・その・・・」
いいよどむ夫に代わり、泣きぬれた顔をむけ、妻が叫んだ。
「むりよ!むり!あの子がそんな話を聞くと思う?わたしたちでさえ、もう話なんてとてもできないのよ?どう協力しろっていうのよ?」
「・・・どういうことでしょう?」
「こういうことよ」
突然若い女の声がこたえた。
 




