ウィルらしい説明
だが、夫になだめられるように女は腰をおろし、どうにか抑えた声でたずねた。
「・・・それだけで、あなたたち、ジェニファーに会いたいっていうの?」
「『それだけ』で、じゅうぶんお会いする必要があるんですよ。単純な事故ではない場合、最後の状況を知っている人というのは、とても重要な参考人ですからね」
ウィルが説明するのへ、女のこめかみに血管が浮かんだ。
「あ、あなた、まさか、ジェニファーが、それになにか、関係してるとでも、」
さえぎるようにウィルは片手をあげ、続けた。
「それを、うかがいたくて我々は来たんですよ。何も関係ないなら、はっきり言っていただければそれで済みます。が、―― もうひとつ別の件があります。二年と少し前、バーノルドの森の中で、保安官に対する傷害事件がおこりました。加害容疑者は、男女二人ずつの四人組の若者。 ―― そのうちの三人は、今回湖からひきあげた三人だとわかりました。さて、あと一人、誰かということになると、いつも彼らと一緒にいたお嬢さんではないか、という話になるわけです。 ―― ちなみに、本当でしたらこの事件はお嬢さんに警察におこしいただいて、被害者である保安官に直接会っていただければ、済んだ話です。ところが、・・・あなたがたがお嬢さんを警察によこすことを拒否なさった。 で、こうしてぼくたちが《はなしをうかがいに》やってきたというわけです」
ウィルは言葉が理解されているかをはかるように、夫婦を見つめ、間をとった。
「・・・不思議なことに、バーノルドでその事件があったあと、お嬢さん以外の三人は、どこかに姿を消しました。そしてようやく、こうして、姿を現したというわけです。 ああ、ちなみにバーノルドの森でその『四人組』は自然保護法も犯しています。―― そういえば、州議員にお知り合いがいるということですが、まさか、あの、《自然保護》をうたっている議員じゃないですよね?―― お嬢さんも、もう子どもじゃないんです。いつまでもあなたがたの保護が通用するものではないですし、 そろそろ過剰な干渉は、やめたほうがいいと思いますよ」
上品な語り口にいくぶん威圧感が加わるのはいつものことだ。
前髪を払い、自分の家のソファに座るようにくつろいでいる男を、夫婦はおびえたようにみつめ、そっと他の男たちにも眼をむけた。




