罠かも
「その日の夜中に三人が声をひそめて言い争うのを、ほかの仲間も耳にしてる。 『ジェニを見捨てた』『保安官が』っていう言葉が聞こえたうえに、数時間後には《スティングのついたブーツを履く男》を警察が探しはじめたって話が伝わって、同じブーツをはいてる《運動仲間》はみんなピートを思い浮かべた。―― が、やつらは『おれたちは仲間を売るようなことはしない』ってことで、口をとじた」
「ちょ、ちょっとまて。つまり、つまり、だ、・・・あの、レオンの事件のときに、逃げた四人組のうちの、ジェニファーだけが、―― バーノルドの森に、のこされた?」
「まあけっきょく、ムキになってたジェニファーといっしょで、その三人も彼女を、本当の『仲間』と思っていなかったって、証明されちゃったわけだ」わいそうにね、と同情してみせるウィルの口調はばかにしたものだった。
ようやく頭が働き出したジャスティンはゆっくりと口にする。
「じゃあ、・・・事件後に置いていかれた彼女は、幸運にも保安官に見つからず、どうにか逃げ切って、元の生活に戻ったのか。それなら、見捨てた《仲間》がいる倉庫に姿をみせなくなってもおかしくないだろ」
納得して痛む眉間をなでれば、となりのケンが呆れた笑いをもらす。
「あのなあ、その三人とジェニファーは、《同じとき》から姿をみせなくなったんだぜ?おれがさっき言ったおもしろい話しってのは、レオンをヤッて帰ってきた三人が、夜中にはじめた《みせもの》だ」
三人が小声で言い争いをはじめるのを倉庫にいた仲間は寝たふりできいていた。
ピートの携帯電話が鳴り、『くそ!ジェニだ!』と叫び、トレイシーとリッジがはやく電話をとるようせかしたのに、ピートはそのまま電話を切った。
「―― トレイシーに責められたやつは『罠かもしれねえだろ!』って叫んだ。まあ、そりゃそうだよな」
 




