おいてきた
質問するジャスティンに、空になった缶を返したケンが、シートにもたれる。
「《仲間》からおもしれえ話をきいたから、それを確認しに行く」
おもしろい?と、思わず聞きかえしてしまった。
「車で沈んだ三人と、いつもいっしょだったジェニファーは、ある日を境に《仲間》のところに、まったく姿をみせなくなった」
「見せなくなった?それで?」
完全に警備官のペースだが、聞かずにいられない。
「根っからお嬢様なジェニファーは、そいつらと付き合っていても高校にちゃんと行ってたし、そのうえ成績優秀だった。あの倉庫には入り浸るようなことはなかったっていうから、ほんとは好きじゃなかったのかもな。―― ある日、いつものように彼女ぬきで倉庫に帰ってきた三人は、こわばった顔でまったく何もしゃべらない。あまりにおかしな雰囲気だったんで、倉庫にいた仲間が冗談で、『どうした?ジェニでも埋めてきたか?』ってからかった。そしたら、ひどく興奮したピートに怒鳴り返されて、いきなりなぐられた。―― どう思う?」
「どうって・・そりゃ、彼女とケンカ別れでもしたんじゃないのか?だって彼女、レオンの事件の時にそいつらといっしょにいたんだろ?本物のお嬢様なんだし、そんなことに巻き込まれたら、もういいかげん目も覚めるだろ」
身を起こしたケンがぐっと顔を寄せる。
「そう。『目も覚め』ただろうな。―― そいつがピートに殴られた日は、レオンの事件があった日の夜だ」
「ああ。だから、ピートはジェニファーって子に振られたんだろ?」
みんなの予想どおり。
その答えにケンは満足そうににやけてから口にした。
「はずれ。 ―― 振られたんじゃなくて、おいてきたんだ。ピートたちは」
「 え?・・・なにを?」
ピシッ、とケンのはじいた指が眉間にはまった。
悲鳴をあげるジャスティンに、いいかげん起きろよー、とつまらなさそうな声がつづける。
「『なにを』って、決まってんだろ、やつらはジェニファーを、現場においてきたんだ」
「うそだろ!?」




