つめよる
顔色の悪い男はおもしろいことをきかされたように目元をゆるめた。
「わたしが、ナタリ・キットソンを殺した?それは、事件をまねて、ということですか?それとも、バーノルド事件のすべての犯人が、わたしということですか?」
「どっちかってことになるな」
「わたしは連続殺人の犯人ではないし、もちろん、模倣犯でもない。・・・ナタリは、―― 会ってしまったんだ・・・」
その、白い顔はなんの表情もうかべていない。
「『会った』とはつまり、あなたに会って、交際していたということですか?」
ルイのおだやかな声が後ろからして、ニコルは自分がいつの間にか、ヤニコフの机にひどく寄りすぎていたのを知る。
座っている男は、ふいに、うっすらと微笑んだ。
「『交際』?・・何度か二人だけでいたのをそういうのならば、そうなるのかもしれない・・・」
「『かもしれない』だあ?ナタリはこの学校を選んで進学して、憧れだったあんたの学科を専攻し、こ、こ、に、通ってたんだろう?」
ニコルの太い指がヤニコフの机で音をたてる。
背後からルイが背中を叩いて交代を告げる。
自覚のあるニコルは大きく息をつき、場所をあけた。




