魚
レオンが顔を真っ赤にして腕を組みうなるのを、ジャスティンがからかう声をかけた。
「レオンはりっぱにオジサンで、」
「クソッ!ジャスティン!」
「な、なんだよ、そんな怒らなくってもいいだろ」
「ちがう。いや、スコットに聞いたほうがいいのか?教えてくれ。この若者たちはいつから湖の底にいたって?」
曲がった鼻梁を走る傷を親指でこすり上げ、それが痛むかのようにきつく目を閉じる。
指名をまぬがれた男が、スコットに早くこたえるよう目で合図する。
「えっと、科捜部からは、車の腐食と衣類の傷みかたからみて、二年以上前、という判断です。この場所は、小型の車なら普通に湖の岸まではいれます。マーノック湖は、湖底に、岩が沈んでるか沈んでいないかで、深さの差が激しいんですが、この車が落ちていた場所は、いきなり深くなる場所でした。そんな場所に沈んでる車をなぜいきなり探し当てたかというと、スピード違反で捕まえた男が、釣り道具と、たくさんの魚をのせてまして、――」
魚?とザックが眉をよせる。
「―― ええ。マーノックの固有種で、釣って持ち帰るのは禁止されてる魚です。そこでくわしく問い詰めたら、その場所を示して言ったんです。―― そこは釣り人の間では良く釣れる場所として有名で、保安官の見回りの時間はわかってるから、ずらした時間で行く。夜釣りをすると、幽霊が出るっていうのも有名。そのうえそこで、人間の顎骨らしきものを釣り上げたやつもいる。なんて言葉もでてきたので、金属探知機で捜査することにしたんです。――― でも、レオン、これの引き上げは、自然保護保安部にも立会いをお願いしたはずですよ?」
はっきりとした口調でスコットがレオンに確認する。
「ああ、・・・立会いにはおれはいかなかった。引き上げがあったのは知ってたんだ。・・・なんてこった・・・・あれが、そうだったなんて・・・」
珍しく怒りをあらわに自分の顔を叩く男に、皆を代表するようにノアが落ち着くよう、肩をたたいて声をかける。
「どうした?おまえらしくないぞ」
エバが湯気の立つカップをレオンの前に置いた。




