『おじさん』
ジャスティンの説明にエバが口をまげ、警察に世話をかけるのが自立の基準?と質問し、みなが口元をゆるめあう。
エバに甘ったるい視線を送った《無精ひげふう》の男が続けた。
「まあ、そういう家もあるってことだ。―― こいつらと、そのほかの友達で、《芸術運動》とかいうのをやっていて、借りた倉庫でつくった《作品》を路上で売ったり店に売り込んだりで、どうにか食いつないでたみたいだ。基本、定職にはつかないのがその運動の信念らしい。まあ、寝泊りもその倉庫だし、パートタイムの仕事はしてたみたいだから、食うには困ってなかった」
クスリを買うこともできたぐらいにはな、とノアの皮肉がはいる。
「そのとおり。本物のギャングになりきれない、“悪ぶった若者達”のはめをはずしすぎた遊びってわけだ。―― ふう、まさかノアが気にするとは思ってなかったな。真面目に仕事しててよかった~。いいか?ぼうやも気をつけろよ。 あのおっさんは、気になったらどこの部署の事件だろうとつっこんで質問してくる。答えられないと、それから一切相手にされない」
「おれは『ぼうや』じゃなくて、ザックだよ。それから『おじさん』、そんな真面目にした仕事なら、その資料みんなの端末にあげたほうがいいんじゃねえの?」
その通りだと笑いがおこり、濃い無精ひげを撫でたジャスティンが、「おれジャンと同じ歳だぜ」まだ『おじさん』の領域じゃないはずだ、と端末機をいじった。
「じゃあ『おじさん』っていくつからだ?」
いつのまにかもどったケンがにやけた顔でマイクにきく。
「ケン、なんでおれに聞くんだ?」
マイクが憮然と聞き返したとき、「ああ・・まったく・・・」とうめくような声があがる。




