暇人の集まり
「さっきの、ろくでもない男の説明の中にも正解はあって、『警察内のすべての部署が情報交換をスムーズにおこない、それをいかに事件解決につなげられるか』っていう前提のもとに、この『合同会議』があるの。 安心して。あのいやな副長官が出席したがるのは、なにか大きな事件の会議のときだけよ。普段の会議にはあの男、興味も持たないわよ」
「じゃあ、これって、定期会議ってわけ?」
「ええ、そうね。―― ここに今集まってるのは、ちゃんと自分の仕事を説明できる人たちで、部署の『責任者』ってわけでもないの。『暇人の集まり』なんて陰口もあるけど、―― この世の中、どこでなにがどうつながってるかなんて、わからないでしょう?」
たしかに、とザックはうなずく。
「だから、みんなそれぞれの担当部署で起こったことを、報告しあう。バーノルド事件とは関係ない事件がこれで解決したこともあるし、横同士の連絡の取り合いって、本来、もっとされるべきなんだけど、警察内部には部署意識がはげしい人がけっこういて、むずかしいのよね」
しかも、と、いつのまにかケンの活躍を語り終えたノアがザックに小指をむける。
気づけば、ほかのみんなもこちらをむいている。
「―― 協力体制をとっているとはいえ、民間の警備官たちを会議に混ぜる必要があるのか?なんていう馬鹿たちもいる。シェパードが代表みたいなもんだ。大抵の奴が、そっちとろくに仕事もしたことがない頭でっかちなやつらだが、なにしろあの調子でうるさくてしかたがない。で、―― 長官も考えた」
「ダン・ギャラガー長官は、そういうやつらの代表格であるシェパードを、『副長官』にすえおいたってわけさ。 おかげでここ三年ほどは、そういうやつらも静かになった。うまいガス抜きだ」
マイクが紙カップを掲げるようなしぐさで皆を笑わせた。
 




