人物像
警察の科学捜査部長であるジョニーが、ケイトの体の部分を調べて出した見解は、『犯人は、殺害直前まで、被害者を丁寧にあつかっていた』というものだった。
「―― 思い出してください。バーノルド事件の被害者はみんな、体の表面はもちろん、内部のどこにも傷もなく、栄養状態もいたって良好でした。手足を拘束されていたような跡もなかった」
「じゃあ、バーノルドの犯人は、普通の変態野郎じゃないってことか?」
ノアが年長者らしい落ち着いた声で確認する。
「その可能性が大きいと思います。つまり、獲物に近づいてからも、手をつけるまで、じっと待てるような人物像だと思います」
眼鏡を指で押し上げた男の答えに、集まった人間は一様に黙り込んだ。
この会議の内容をまとめるためにキーボードをたたいていたエバの指がとまる。
「ねえ、スコット、・・・それってまさか、彼女たちは殺されるずっと前に犯人に出会って、何も知らずに二年ほど、その犯人とお茶をのんだり、笑い合っていたってことかしら?」
「その可能性もあるかと・・・」
「変態野郎よりも、最悪だわ」
自分が責められたように感じたスコットは眼鏡を直しながら、困ったように口をとじた。
「―― まあ、バーノルドの森は、一度おいといて、ケンが手柄をたてた話でもしようと思うんだが」
沈んだ場をとりなすようにノアが提案した。
立ちあがったケンが、機嫌をそこねたこどものような顔でトイレに行ってくるとでてゆくのをみんなで笑いながら見送り、目があったエバがザックに小声で説明する。




