№13― 交換する?
№13
「よう新人、その後、どうだ?」
ザックの肩をたたいたのは、バーノルドの現場で『その感覚をわすれるなよ』と、からかうでもなく声をかけてきた警察官だった。
明るいところで会ったのと、髭も髪もきれいになって、この前よりも若い印象だ。
四十代より前かもしれないとザックは訂正をいれる。
「見てのとおり、ちょっと左の頬に一発くらったのと、左の腕にひっかき傷」
聞かれた当人の代わりのように、横にいたケンが説明。
笑った相手が、そりゃ災難だったな、と会議用に整えられたテーブルへ移動した。
「―― どうせ、お前かジャンがなにかやったんだろ?警備官の歓迎のしかたはひどいな。うちは優しくて親切指導だ。 よかったらいつでもこっちに転職してこい」
実際に、そういうこともあるのだ。
窓際で数人としゃべっていた班長がそれを耳に拾い、おいマイク、と勧誘した警官をよぶ。
「うちの期待の新人ひっこぬくんじゃねえ」
「へえ、みんな聞いたか? ―― それなら、ジャスティンと交換ってことでどうだ?」
マイクの言葉に、そばでコーヒーを飲んでいた若い男がむせ、ジャンと同僚になるなんて冗談でも勘弁と、ここにいない警備官の名前をだして抗議した。
他の人間も興味深げにザックを見ている。
耳まで赤くなった若者は、どもるだけでうまく言葉が出せずにいた。
「どうしたザック?もっと胸をはっていいんだぜ。なにしろあのアメリに『もう一度お願いしたい』って言わせたんだ」
「ケン!おまえのせいだろ!」
みんなが笑ったところで、ドアが開き、いやに高い声が響いた。




