114/272
言ってやってよ
「引き取った本はすみやかに処分するって言い張ったよ。自分はただ、ナタリがどういったポイントを勉強していたのか、詳しく知りたいだけだって。 でも、もう一回怒鳴ったら、『気が変わったら連絡してくれ』って切れた」
「・・・連絡を待ってるって?」
「そういうこと。で、おれはこの本の付箋の秘密を見つけたから、おっさんには連絡しないで、あんたたちを待ってたんだ」
でも役にたたなそうな奴らだったら、教えるつもりなんてなかったけど、と歳相応に、照れたように笑ってみせてから、表情を変え、きっぱりとつけたした。
「やっぱり、あいつが犯人だよ」
ルイと目を交わしたウィルは、黙ったまま少年の肩をたたく。
あぐらをかいた少年は、ようやくなにかをやり遂げたように、ゆっくりと大きく息をつき、ふたりに後を頼んだ。
「あんたたちが、直接あいつに言ってやってよ。―― この先も気は変わらないってさ」
寂しさと愛しさをにじませた少年の目は、本棚を見つめたままだった。




