射撃場
金髪は長い前髪を払うと広い額がのぞく細く高い鼻筋のすました雰囲気の男だ。
反対側の黒髪の男は、無遠慮にザックをじろじろと見てきて、なにがおもしろいのか、ずっとにやにやとしている。
長い廊下をいくつか曲がると、だんだんと壁にあるドアの数も減り、照明も少なくなる。何度もセキュリティチェックのあるドアをくぐって進むと、廊下も壁もむきだしのコンクリートになり、時々みかける大きな金属製のドアには全て『危険・注意・呪文をどうぞ』の札。
つきあたり、真っ黒に塗られたおおきなドアの前で立ち止まる。取っ手はない。
黒髪の男が「ひらけごま」と口にしてキーロックを叩き開錠。
硬く重い音で左右に開いたドアのむこう側は、予想に反し、ひどく明るかった。
「え?ここが射撃場?」
「そう、ここ」ウィルが前髪をはらった指でしめす。
入りぐちは、フロアを見下ろすような高さだった。幅の広い階段をおりたそこは横に広く、金属製のテーブルと椅子がまばらに置かれている。飲み物を手に座った制服姿の男たちはみんな、奥にある黒く大きな窓の上をながめていた。
「あの黒い窓のむこうが射撃場で、みんなが見てる窓上の画面に、成績が出てる」
「すげえ。訓練学校と違ってかっこいい!」
興奮するザックは走りより、なめらかな速さで成績を書き換えてゆく画面を見上げながら、窓をのぞく。
黒いガラスは色が濃く、よほど顔を近付けないと中の様子が見えない。
どうやらレーンは五つほどあるらしく、そのうち三つを使っていた。
どの窓にも見物人たちがはりつき、紙カップ片手に歓声をあげている。
射撃をするメンバーもどんどんと入れ替わっているようで、画面上の名前も入れ替わる。
なのに、一人だけ交代しない男がいた。
いちばん右のレーンのみえる窓にだけ、誰も近寄らない。だが、よくみると、窓の中ではその男の周りに人が集まっていた。
ザックはもっとよく見ようと顔をつけるようにのぞきこむ。




