どこまで話していいか
「―― もっと何もかんがえなくていいころは、一緒に遊んでたんだ。だけど、おれたちの信仰が、他の子と違うって気付いたときに、ナタリはそれを不思議だって思っちゃったんだよ。おれはどっちかっつうと、親に言われたとおり、何も考えずにそれを受け入れたのに、ナタリは・・・」
ベッドに腰掛けた少年は、あわてて顔を袖でぬぐうと、声の調子を整えるように、ゆっくりと続ける。
「―― うちの親は、ナタリが事件にあったのは、大学で、『神様』を、あばきたてるようなひどいことをしたから、罰がくだった、って言うんだ。・・・あの二人、ちっとも理解してないから、ナタリが嫌いだったあの教会で、二度も葬儀をして、お墓だって、あの地下室に・・・」
「地下室?きみたちのお墓は、地下にあるのかい?」
驚いた声をだすウィルを、不安げな顔が見上げる。
自分たちだけの、信仰の秘密とも呼べるそれを、どこまでこの男たちに話していいのか、少年にはわからない。
不安を見て取ったルイが、静かに口をだす。
「―― ぼくが言うのもなんだけどさ、ご両親は、自分たちのことでいっぱいみたいだねえ」仲が良いのはいいことかもしれないけど、と言うのに、むかしからだよ、と冷めた声がかえる。
「・・・二人が部屋にこもると、おれたちは近寄っちゃいけなかった。でも、聞こえるんだ。―― 獣みたいな声が。・・・二日間部屋から出て来ないなんてしょっちゅうだったし、その間こっちは、放っておかれたままだった」
ここに、ニコルがいたら、さぞ深いため息をついただろう、と警備官たちは無言で顔をみあわせる。




