かたちだけ
「―― そう、仲が良かったわけじゃないけど、それでも両親より話すことは多かった。これは断言できるけど、両親よりぼくのほうがよっぽど、彼女について知っているよ。―― きみも、だろ?きみは、両親が何も知らないことに、ちょっといらだってるみたいだったし」
「・・・・・」
少年は、下から挑戦するような視線をウィルにおくり言い放った。
「ナタリは、・・・たぶんあんたの姉さんより、性格いいよ」
「まあ。そうだろうな」
「だけど、きっとあんたの姉さんより、バカだ」
「どうして?だってたしか彼女、州立大学に」
「『民族習慣と信仰学』だろ?・・・ナタリがその学科を選んだ理由、聞きたい?」
ウィルは素直にうなずく。
少年は組んだ腕をゆすって笑う。
「さっきうちの親は『聖堂教』のこと、すごい信仰してるみたいに言ってたけど、あんなの、かたちだけだよ・・・。『かたち』だけで祭壇を作って、聖堂教会も行って、お祝いの日にはそろって食事なんて、じいちゃんが生きてたころからやってるけどさ。・・・うちが信仰してる『聖堂教』は、本当のそれじゃないんだ・・・」
少年は、腕を解き、よりかかった壁と背中の間に手をさしいれた。
ウィルは待つ。
 




