気がめいる (ナタリの両親の証言)
娘の遺体の最後の部分が見つかって、まだ一週間も経っていないというのに、警察官ではなく警備官の再調査を受け入れてくれたナタリ・キットソンの両親は、こちらがとまどうぐらいに、しっかりと現実を見ていた。
「きっと、うちの娘と一緒に見つかったエミリーの頭は、次の犠牲者の身体とともに見つかるでしょう」
「・・・ええ。いままで、は、そうだった、かもしれません」
ジャンはタイをさわることもなく、座った膝に身を乗り出すように手を組み置いて、その父親の目を見返した。
あやうく大声で、そんなことはない、と怒鳴りそうになった自分を心の中で注意する。
「・・・そうならないためにも、娘さんのことをもう一度調べたいのです。警察官にも話されているでしょうし、なにより、まだ、時間も経っていないのですが・・」
何かから身を守ろうとするでもように、しっかりと身を寄せ合いソファに座る被害者の両親に、ジャンは言葉をさがす。
そこから少し距離を置くように座った十五歳の弟は、無表情を装っているが、落ち着かないしぐさからひどく緊張しているのが伝わる。
こういう会談では、相手が身構えてしまい、大事なことが引き出せないことがよくある。
先日のドナ・ホーンの遺族とのやりとりを思い出し、ジャンは気がめいるのを感じた。
申し訳ありません。100話越えてしまいました・・・
お付き合いいただける方は『次』をめくってみてください




