留守番
金髪の男が手にあったカードを捨てて長い前髪を払う。
黒髪の男が積まれたカードをめくり、どうせおまえの負けだったんだと笑う。
それをみながら、これは何か間違えたようだとあとずさってドアプレートを確認しようとすれば、
「合ってるよ」と金髪が微笑む。
合っている?
いやでもしかし、勤務時間中に『班長室』の床にだらしなく座り、カードゲームをしている男の言うことだ。
疑っているのが伝わったのか、金髪の男は、だからコーヒーでも飲んで待っていようって言ったのに、と黒髪の男に文句らしきことを伝え、下からのばした手でザックに握手を求めた。
「いつもは仕事中にこんなことしてないからね。うちの『班長』が留守なんで、おれたちが代わりにきみを待ってたんだって。おれはウィル。そんで、こっちがケン」
赤い絨毯に後ろ手をついた黒髪短髪のほうが片手を差し出す。
訓練生よりすこし長いだけの癖の強い短髪と、見上げる顔のつくりのせいか、十六、七にしかみえない。
「モンゴロイド特有で若く見えるだろ?けど、お前と同じくらいだぜ」
このまえ二十歳になったという言葉に驚きながら手をにぎる。
「あの、班長は?」
当然の質問をする。なにしろ、今日こうして新人が来るのを知らないはずはない。
「ああ、今日うちの班は午後内勤だから、他の連中と射撃場行った。ところで、うちの宿泊施設はどうだった?前回の夜勤当番はニコルたちだから、ホテル並みに整ってたろ?」
おれじゃなくて良かったな、と立ち上がったケンの足元に散らばったカードを集め、ウィルが小さく笑う。
「ニコルは几帳面な男だからね。ちなみに、班長自身は君のこと待ってようとしたんだよ。けど、他の連中がうるさくてね。なにしろうちの班長は、人気者だからさ」
「そんでもって、気が短い」
ケンの言葉に笑ったウィルがカードを箱に収め、立ち上がる。
思いのほか高い位置にきたその顔が、いこうか、とドアをさした。
「―― うちの班長がのんびりここにいるなんて、あんまりないんだ。今日もみんながよってたかって射撃の『的当て大会』をしつこく希望したからさ、」
右側を歩くウィルが説明しだした。
「―― 『的当て大会』って、いつも賞金つきなんだけど、『今日は新人が来るから』なんて辞退の意味で、賞金の小銭がもられた灰皿に、チーフが紙幣をだしたのを見て、ブーイングがおこった」
左側につくケンがいい気味だというように親指を下げた。
「金だけだして参加しないなんて、どっかのお偉いさんみたいな逃げ方すんなって」
「で、それにカチンときたから、三十分でおわらせてやるって先頭きって出ていったのが、二十分ぐらい前」
仲良く交替でしゃべる二人に挟まれ廊下を進む。




