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2話「帰還は絶望的か」

 終わったぁぁぁぁぁぁーー~~……。


 どうやら私はもうあちらの世界へは戻れないようだ。そう、日本にはもう帰ることができない。話を聞くに、それが当たり前のことらしい。


 あの後ローブの男と共に城へ行った。そしてそこで国王陛下と呼ばれている青年と話をした。ちなみに国王は二十代後半、まさかの若さであった。何でも、先代が急に亡くなり即位したのだそうだ。


 そうして色々話したり話を聞いている中で、一度召喚されれば二度と元の世界へは戻れないということがはっきりと示されたのである。


 ――で、部屋を与えられたがそこへ入ってから今までずっと涙が止まらない。


「どうしよう……これから……」


 元々化粧はしていなかったから、泣いても化粧が崩れることはない。

 それだけが救い。

 でもそんな救いがあったところで涙を止めるほどの救いとはならないのだ。


 辛いよ……やっぱり、寂しいよ……。


 普通の夜が来ると思っていた。

 母に迎えてもらいながら帰宅して、美味しいご飯を食べて、家族で喋って――そんな平凡でも温かな普通の日が過ぎてゆくと思っていたのだ。


 なのにこんなことになってしまった。


 しかも、もう二度と帰ることができない可能性がかなり高いだなんて。


 こんなことって……。

 どうしよう……。


 両親もきっと帰らない私を心配していることだろう。

 そういう意味で親への申し訳なさもある。


 もはや絶望しかない、この胸の内には。


 ――その時、誰かが扉を数回ノックした。


「……はい」

「入っても良いだろうか」


 その低い声は聞いたことがあるものだった。


 そう、恐らく、声の主は国王だ。


 昔からの知り合いではないけれど、ある程度の時間会話を聞いていたので、声を間違えることはないと思う。


「え……い、今、ですか」

「ああ」

「ま、待ってください、少し……少ししたら、開けます」

「分かった、待とう」


 どうしよう、ずっと泣いていたせいで顔が真っ赤なのに。

 こんな顔で人前に出るなんて恥ずかしい。


 いっそもう放置してくれれば良かったのに……。


「どうなっている? 大丈夫か?」

「あと少しで開けられます」

「ああ、分かった」

「すみません、お待たせして……ではそろそろ、開けますね」


 何とか言葉を紡いで、扉を押し開ける。


 するとそこにはやはり国王が立っていた。


「エノミヤ殿、その顔……」


 彼は顔面を真っ赤に腫らした私を見て驚いた顔をする。


 何とでも言えばいいわ!

 もはや隠しはしない。

 私がこんな思いをしているのは貴方たちのせいよ!


 ――そのくらいの心持ちで向き合わなくてはやっていられない。


「もしかして、泣いて?」


 きょとんとしている国王。


「……そうですよ、泣いてました。だってもう……もう、戻れないんです、今まで生きてきた世界へは」

「今はそう思うだろうが、じきにここが好きになるだろう。貴女がそう思えるように努力するのでな」


 かけられた言葉に、つい感情が波打ってしまう。


「そういう話じゃないんです!!」


 感情のうねりのままに叫んでしまう。


「ずっと生きてきた人たちと急に引き離されて、一人になって、辛くないはずがないでしょう!!」

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