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①マルミュットは姉に自分なりの回答を提出する

「だいたい分かりました」


 義兄のところを訪問してしばらくしてから、私はお姉様が一人で居る時間に家を訪問した。

 今回は先輩は無しだ。

 そもそもがお姉様の許可で動いていたのだから、お姉様自身に聞く時には駄目だろう。


「そう?」


 お姉様は子供をミニヤにしっかり見ている様に任せると、私を居間へと招いた。


「だいたい、ね。全部じゃないのね」

「ええ。あくまで推論ですから。本当のところはそれこそお姉様自身にしか分からないことですし」

「一次資料には敵わないわね」


 くすくす、とお姉様は笑う。

 そこには浮気された女の持つ複雑な感情は読み取れない。

 そもそも浮気されて傷ついたという雰囲気も無い。

 ただそこにあるのは、可愛い子供に一生懸命な母親の顔だけだ。


「で、マルミュット、貴女の結論としてはどうなの? 私が何故あの子を引き取って自分の子として育てることにしたのか、その理由は」

「ええお姉様、これは分けて考えないといけないことなんだと思いますが、とりあえず子供を引き取った理由は『子供が欲しかったから』……いえ、『カイエ様とお義兄様の子供が欲しかったからじゃないですか?』」


 するとお姉様はぱちぱち、と小さく手を叩き「ご名答」と言った。


「じゃ、それで本当に正解なの?」

「ええそうよ」

「それは、ご自分がどうしても妊娠できない身体だから。だけど子供は欲しい。養子も考える。だけどできれば近い子が、夫の子供でもいい。ただ商売女とか全く知らない誰かは嫌だ、だから親友のカイエ様、大好きなカイエ様との子供なら自分もじっくり愛せるだろう、と」

「ふんふん」


 楽しそうに頷く。


「お姉様は、お義兄様よりカイエ様の方が大事だったのでしょう?」


 それにはお姉様は黙って微笑んだ。


「そういうことはあるんですか?」

「……ねえマルミュット、貴女は自分の婿になる相手を上手く学校とかで見つけてこられたわね」


 え、と私は突然変わった話題に目を瞬く。


「けどそれまでは結婚はしない、とか言っていたこと無かったかしら?」

「ああ…… まあ、私の様な頭でっかち女と結婚したい殿方もそうそう居ないと思ってましたし」

「でも、もしお父様が誰それと結婚しろと言ったら?」

「吐き気がしない程度だったらまあ仕方がないと思ってするでしょうけど。でもそれは、お姉様が嫁に出なかったらその仮定はあり得なかったわ、だって、お姉様が婿を取って家を継いでいたら、私はそのまま一人で老嬢のまま学問の道に進んでいたと思うし」

「そう。私が外に嫁いだということを疑問に思わなかった?」


 私ははっとした。


「……そう言えば一つ疑問があったの。お姉様どうして、第一に進学しなかったの?」

「どうしてそう思う?」

「だって私が受験する時に、お姉様休みの時期に戻ってきてはさらさらと問題集を解いてくれたじゃないですか。いやそれは無理だ、と第二とも何だかんだで交流があった時に私ようやく知ってびっくりしたんだから」

「そうね」


 ふっ、とお姉様は笑った。


「第一の受験用問題集は第二のカリキュラムより厄介なのよね。貴女最初っから第一一本だったから知らなかったと思うけど、第二は普通にちゃんと家庭教師に学んでいる良家の子女なら大概入学が大丈夫なレベルなのよ。そもそもそんなに学業を重視していないし」

「第三はそれよりちょっと学業の方は低いけど、基本真面目でいい奥さんになることに憧れを持ってるひとが多かったし、第四は良家の子女として生まれても行き場の無い手の付けられない人達の学校でした」


 芸術特化の第五だの何だかよく判らないやたらに運動能力を高めているらしい第六というのもあるけど、まあそこはおいておく。


「お姉様だったら絶対第一でも上位に居られたと思うのに」

「でもねマルミュット」


 お姉様は軽く首を傾けた。


「貴女今何処に在籍しているの?」

「え?」

「女子専門でしょう?」

「それが?」


 お姉様の質問の意図が汲み取れない。


「女子は帝大に入れないじゃない」

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