私を知る
ただいま絶賛固まり中です…気を失っていいのなら今すぐに倒れます。いや、倒れさせてください…
「…ねえさま大丈夫?」
なかなか反応しない私を見てか、男の子は心配そうに私を見上げた。どうしよう…すごい美少年がこんな近距離に…!神様いや、もう誰でもいいから!助けて…!
……返事はもちろん返って来ない。もう助けは来ない気がしてきた…こうなったら自分で考えるしかない…
…ふと思いついた。今の私は多分この子のお姉ちゃんの体にいる。
話を合わせればいける!!…はず!当たって砕けよう…勇気を絞りだして、声をかけてみた。
「心配かけてごめんなさいね…頭が痛くて記憶が少し混乱しているの。あなたの知っていること、ぜんぶ教えてくれる?」
そう言うと、男の子はパッと花が咲くように笑った。言い訳に無理があった気がする。でも、そんなことより…美少年の満面の笑み攻撃力高すぎる…というか、自分の言おうとした言葉より丁寧な言葉が出た…私じゃないみたい…いや、私じゃないけれど!
「えとね、姉さま!」
「ええ」
嬉しそうな美少年には悪いけれども今の状況が全くわかっていないから、とりあえず聞いてみる。
「ここは、ソルステラ公爵家でね」
…公爵家。ほんとに転生しちゃったんだな…現実味が無さすぎて、実感が湧かない。というか、自分の知っていることを一生懸命教えようとしてくれている…この子は天使ですか……?
「えと、僕はローレン。ローレン・フォン・ソルステラ」
じゃあ、次期公爵様なのかな…こんな美少年が、大人になったらさらにカッコ良くなりそう。これは女の子達が絶対放っておかないと思う。
「えと、このるーふぇりあ王国にはね」
今るーふぇりあって言った!!呂律が回ってないのが可愛い…いまさっきまで嬉しそうに説明してくれていたのに急にシュンとしてしまった。
「あ…でも当たり前なことばっかりだから、ねえさまならもう知ってるよね。」
ふぇっ!?いやごめんなさいわかんないです…というか、可愛い。どんな仕草でも可愛いのは反則です。そんなことを思ってる私とは裏腹に、口は勝手に言葉を発していた。
「ありがとうロー」
何故かは分からないけれど、何故かお礼が言いたくなった。私はこの子の愛称なんて知らないのに。
男の子…いやローは、きょとんとしてから嬉しそうに笑った。それが可愛くてつい頭を撫でる。
お礼を言ったせいか、頭を撫でたせいか、お互いに気恥しい雰囲気になってしまった。何を話せばいいか分からない。だから、とりあえずベッドから出ようと、手に力を入れて起き上がった。すると、ローが驚いたような顔をする。
「ねえさま!?起き上がって大丈夫?」
私はヒョイっとベッドを降りた。
「どうしたの?」
驚きで固まっているローがいる。どうしたのだろう。この子の体は身体が弱いのかな?その割には、身体に少し違和感があるだけだなと考えながら、ドアノブに手をかける。そして、扉を開いた瞬間。目の前に人がいた。その人は、ローと同じく、私を見て驚いている。そしてその人は、何故か私がよく知っている。
ーーー頭でそう認識した途端、体が急に動かなくなった。
「ーーーさま!?大丈夫ですか!」
「っ!?ねえさま!?」
急に倒れた私の体をその人は受け止めてくれた。それを認識したのを最後に、意識を手放した。