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第23話 少ないモンスター

「アイテム拾うか」


 モンスターから出てきたアイテムを手に取る。布みたいだ。


「これどういうアイテムなんだろうな」

「布、みたいですけどね……燃えない布とか?」

「なるほどなぁ」


 ミヤビが指を口元にあてた。確かに、燃えない布はあるかもしれない。


「にしても、すぐに効果が分からないのは、ドロップアイテムのめんどくさいとこですね」


 ミヤビが布を持ち上げた。ちょうど人ひとり包み込めるくらいの大きさだ。触っただけではなんの反応もない。普通手で触れた時点で効果分かったりするんだけどな。これは分からないみたいだ。

 ダンジョンのドロップアイテムを の効果を調べるためには、《鑑定》のスキルが必要だ。だけどここには《鑑定》を持つ者がいない。

 つまり、効果が出るまで自分で調べるしかないのだ。


「考えても分からないし、次進もうか」


 このモンスターとの戦いで布が役に立つとも思えないし。


「ですね……あ、いやちょっと待って」


 袖を引っ張られ、足を止める。


「これ、被せたら透明になるんじゃないかな」

「……マジで?」


 ミヤビの布を被せた部分――前腕は、確かに綺麗さっぱりなくなっていた。ミヤビが布を這わせるたび、平坦になっていく。最後にすっぽり被ると、ミヤビの姿は見えなくなった。ただ布がポツンと置かれているだけだ。


「ありがとう、ミヤビ。モンスターと戦うときも使えそうだな」

「うん。使えそうなので良かった」


 フフン、とミヤビが笑う。


「じゃあ、行こうか……ルル、行けそう?」

 

 ルルはコクコクと頷く。さっきで力が抜けたらしく歩くスピードがゆっくりになったルルに合わせて、3人で歩く。まだモンスターは見ていない。おかしい。普通ならもっといるはずなのに。


「……次の階層側に寄ってるのかな」


 あまりの少なさにミヤビが首を捻る。これなら何事もなく抜けれそうだけど……。

 俺たちはできるだけモンスターと戦わないことを決めていた。最下層に近いここのモンスターは強すぎる。力では適わない。

 だから、できるだけ気配を消して逃げるのだ。


「そんなことあるのか……。他の層に近づけば近づくほど、魔力が混ざってモンスターが生きにくくなる。だから、モンスターはちょうど真ん中に集まるんだ」

「なるほどね」

「た、確かにここまでいないのはおかしいですよね……」


 ようやく口を開いたルルの顔を見る。やっぱりどこか怯えたような声だけど、それでもなにか吹っ切れているような感じがした。戦いで乗り越えたのかもしれない、彼女の恐れていたものを。


「あ、の。私、さっきから数えてたんです……」

「モンスターの数?」


 尋ねると、控えめに頷いた。


「はい。他の層では中間地点にはだいたい250匹くらいいるんですけど、ここは……20匹しかいませんでした……」


 眉根を寄せる。ルルの言った数字はおそらく本当だ。ルルみたいにちまちま数えたことはなかったが、大まかに計算はしていた。そのときの数も250匹前後。だからこそ俺も疑問に思っていたのだ。


「やっぱり少ないよなぁ。下の方にもほとんどいなかったし……となれば上に集まってるんだろうけど」


 なんせ珍しいケースだ。慎重に対処しないとヤバいことになりそう。今の状態も十分悲惨なのに。


「上の方、か。それ、行けるかな。他の層に」

「うーん、でも上の方に固まってくれてた方がやりやすいっちゃやりやすいかもな。ほら、上の方に固まってくれてた方が、逃げる距離は少なくて済むから」

「確かにそうかぁ」


 むぅ、とミヤビが唸った。

 ルルは何やら深刻そうな顔をして俯いている。

 一気に雰囲気が暗くなった。

 穴に落ちてから、光が見えては闇に飲まれ、希望を感じては絶望し、の繰り返しだ。3人いたから、どうにかここまで来れた。メンタル面でも。

 にしてもこんな現象が起きてるのはなんでた? ここはそういう層なのか?


「じゃあ、さっさと上に行っちゃった方がいいかな」


 ミヤビの言葉でハッと我に返る。

 同時に頭にぼんやりと浮かんでいた案も弾け飛んだ


「あ、うん。その方がいいはず……」

「でも上に行ったら行ったで殺人鬼もいるのか」


 答えると、ミヤビは肩を抱いた。本気で怖がってる様子ではなさそうだ。

 ……だけど、そうだ。


「モンスターの数がこんな変なことになってるの、殺人鬼が原因ってことないかな」

「殺人鬼が原因?」

「あぁ。殺人鬼は、今上の層にいるんだろ? ここを抜けるときに、何かしらの能力を使ったのかもしれないと思って。そう考えたら……」


 勘に任せるまま口を開く。


「殺人鬼は1人じゃなのかもしれない。もしくは、パーティ同士で争ったか」


 まさか、とは思うけれど。無きにしも非ず。


「ま、じですか……」


まるで氷を詰められたかのように背筋が冷たく感じた。

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